いかでこの人に、思ひ知りけりとも見えにしがな。(枕草子)

〈問〉次の古文を現代語訳せよ。

いかでこの人に、思ひ知りけりとも見えにしがな。

枕草子

いかで/こ/の/人/に、/思ひ知り/けり/と/も/見え/にしが/な。

〈副詞〉いかで

「いかで」は「願望の終助詞」などとセットになると「なんとかして~したい(してほしい)」と訳します。

〈+α〉「いかで」の訳し方

◆下に推量の語を伴う場合

 a.疑問 どうして~ / どういうわけで~ / どのようにして~
 b.反語 どうして~か、いや、そんなことはない。

◆下に願望や意志の語を伴う場合

 強い願望 どうにかして/ぜひとも/なんとしても

〈助動詞〉けり

「けり」は、本質的に「それが起きたことを事後的に知ったもの」に使用します。

そのため、人から聞いた話ならば「伝聞過去」になります。「間接過去」とも言います。

ある存在や現象に自分自身が気付いたものなら、「詠嘆」になります。「あとからわかった!」というような感覚です。「気づきの過去」とも言います。

さてここでは、「なんとかしてこの人に、『思い知った』と思われたいものだ」という文脈ですから、「思ひ知る」という感情的な動詞に続くことから考えても、「詠嘆」で解釈するほうが適当です。

〈動詞〉見ゆ

「見え」は、ヤ行下二段活用動詞「見ゆ」です。

直後に「ぬ」があるので、連用形になっています。

(「にしがな」の「に」は、そもそもは完了(強意)の「ぬ」です)

「見ゆ」は、主に、「見える」または「見られる(相手の目に入る)」と訳します。「相手の目に入る」ということから、「現れる」と訳すことも少なくありません。

〈+α〉「見ゆ」のニュアンス

「見ゆ」の「ゆ」は、助動詞「る」とほぼ同じ役割を果たすと考えて大丈夫です。

もともとが「自発」なので、「見える」「目に入る」「現れる」という意味で用いられることが多くなりますが、この例文のように、〈受身〉の意味を採用し、「見られる」と訳すこともあります。

また、「見えず」のように、下に打ち消し表現を伴う場合、〈可能〉の意味を採用し、「目にすることができない」と訳すこともあります。

このように、上代には助動詞「ゆ」「らゆ」があり、〈自発〉〈受身〉〈可能〉を意味しました。

動詞「見ゆ」や「覚ゆ」などは、その「ゆ」を取り込んで一語化した動詞です。

なお、「ゆ」「らゆ」の子孫的な位置づけの「る」「らる」には、上記3つの意味以外に〈尊敬〉の用法があります。

〈連語〉にしがな

「にしか」「にしがな」「てしか」「てしがな」は同じ訳し方でかまいません。詠嘆的願望を表します。

もともとは完了(強意)の助動詞「ぬ」や「つ」に「しか」がつき、さらに「な」が付いた連語として定着しましたが、「にしがな」「てしがな」でセットで覚えてしまい、「~たいものだ」と訳していきましょう。

解答例

何とかしてこの人に、
(私のことを)思い知ったなあと見られたい。
      【理解したなあと思われたい。】