いかで、鳥の声もせざらむ山にこもりにしがな。(宇津保物語)

〈問〉次の傍線部を現代語訳せよ。

 いかで、鳥の声もせざらむ山にこもりにしがな

宇津保物語

現代語訳

なんとかして、鳥の声もしないような山にこもりたいものだ

ポイント

む 助動詞

「文中連体形」の「む」は「仮定」または「婉曲」です。

「仮定」ならば、「鳥の声もしないとしたらその山に~」

「婉曲」ならば、「鳥の声もしないような山に~」

となります。

「文中連体形」の「む」は、「仮定」でも「婉曲」でも訳せるケースが多いのですが、

「む」の直後の体言が省略されていれば「仮定」で訳し、体言がそのまま存在していれば「婉曲」で訳す、というくらいのゆるいルールにしておきましょう。

ここでは「山」があるから、「婉曲」で取っておくということだな。

そうです。

ただ、体言があっても「仮定」にしたほうがよいケースや、体言がなくても「婉曲」にしたほうがいいケースといったものもありますので、前後の文脈をみて柔軟に考えましょう。

にしがな 連語 

「にしがな」は自分の「詠嘆的願望」を表し、「~したいものだ」「~してしまいたいなあ」と訳します。

「に」は、もともとは完了の助動詞「ぬ」です。

「にしがな」は、上代における希望の終助詞「しか」が、完了の助動詞「ぬ」につき、「にしか」となり、それに詠嘆の終助詞「な」がついたものです。

「にしか」のときはほとんど清音のままですが、「にしがな」になると「が」が濁音化します。

「にしがな」「にしか」で連語になっていますので、いっそ一語の助動詞のように取り扱ってもかまいません。

同じように成立した言葉に「てしがな」「てしか」があります。

「て」はもともと完了の助動詞「つ」です。

+α 願望と希望

「願望」と「希望」という言葉が文法書によっては混在していますが、両者に意味としての大差はなく、文法上「希望」と「願望」は同じことだと受け止めてさしつかえありません。したがって、選択肢問題で「ア 願望 イ 希望」というようになることはありません。仮にあるとすれば、そのどちらも不正解です。  

にんじん得てしがな。