藤原定家（ふじわらのさだいえ／ていか, 1162〜1241）は、鎌倉時代の初期に活躍した有名な歌人です。短い詩である「和歌」をととのえ、日本の美しさを感じさせる表現を高めた人として知られています。とくに『新古今和歌集』という歌の集まりを作るメンバーになり、その編集では「しずかで深い気持ち」「季節のうつろい」「言葉のひびき」をたいせつにしました。
定家の和歌は、自然の景色や気持ちを、はっきり言うのではなく、すこし想像させながら表します。たとえば有名な歌に、
見わたせば 花も紅葉も なかりけり 浦のとまやの 秋の夕ぐれ
というものがあります。「花や紅葉がない」と言っていますが、だからこそ、さびしい秋の夕方の静けさや空気が伝わります。定家は、こうした「言いすぎない美しさ」を大事にしました。
また定家は、昔の歌の本を読みくらべ、まちがいを直したり、正しい文章をまとめたりしました。これは学者のような仕事で、のちの時代まで役に立ちました。
さらに『明月記（めいげつき）』という日記には、宮中（きゅうちゅう）の行事、天気、星や月のようす、地震などの出来事がたくさん書かれています。いまでも歴史の資料として大切にされています。
定家は、生きていた時代だけでなく、のちの俳句や連歌の世界にも大きなえいきょうを与えました。言葉を工夫し、読み手に「感じてもらう」表現をめざした人として、今でも評価されています。
