やいゆえよ 2024.05.29 目次 やゆよ や やがて【軈て】 副詞「軈て(やがて)」と書きます。この漢字を書けるようになる必要はないのですが、「身」に「應」と書く文字ですね。「應」は「応対」「応答」の「応」です。要するに「物理的にそのまま応じる」ということであり、「間を置かずに、続けて何かが行われる」ことを意味します。状況的に続くのであれば「そのまま」と訳し、時間的に続くのであれば「すぐに」と訳すことになります。 やさし【優し】 形容詞(シク活用)動詞「痩す(やす)」が形容詞化したもので、文字通り「身がやせ細るようだ」「消え入りたいほどだ」という意味になります。ストレートに「身も細るほどの」とか「消え入りたいくらいに」などと訳すこともありますが、それほどに「たえがたい」「はずかしい」と訳すことが多いです。 やすし【易し・安し】 形容詞(ク活用)「休む(やすむ)」「休らふ(やすらふ)」などと同根の語と考えられています。そのことから、平易で気楽なイメージをもっておくといいですね。反対の意味で用いられる語は「かたし(難し)」です。あるいは「にくし(憎し)」も「やすし」と反対の意味合いを持ち合わせています。つまり、「やすし」は、「難しくないこと」や「心がザワザワしないこと」を意味しています。事態が複雑ではなく、すいすいと物事が進む状況をいう場合には、「たやすい」「容易だ」「簡単だ」などと訳します。そして、そういう状況におけるストレスのない心理状態をいう場合には、「安らかだ」「穏やかだ」などと訳します。 やつす【俏す・窶す】 動詞(サ行四段活用) 「やつる」の他動詞型が「やつす」です。「やつる/やつす」の「やつ」は、現代語で言う「やつれる」の「やつ」と同根で、「やつる」は「見た目の華やかさのレベルが落ちること」であり、「やつす」は「見た目の華やかさのレベルを意図的に落とすこと」です。 やつる【俏る・窶る】 動詞(ラ行下二段活用)「やつる」の「やつ」は、現代語でいう「やつれる」の「やつ」と同根であり、「目立たない姿になる」「みすぼらしくなる」という意味においては、現代語「やつれる」に近い意味を持ちます。なお、古語「やつる」を「やせ細る」という意味で用いることはまずありませんので、そこは現代語「やつれる」とは異なるところです。 やむごとなし 形容詞(ク活用)「止む+事+無し」で「やむごとなし」になりました。「止む」が「止まる」「中止になる」ということですから、「やむごとなし」は「(作業を)やめてはいけない物事」や、「(扱いを)やめてはいけない対象」に使用します。 やる【遣る】 動詞(ラ行四段活用)「やる」は、「こちらから向こうに行かせる・送る・届ける」といった意味です。漢字で書くと、「遣隋使」「遣唐使」でおなじみの「遣る」となります。「遣」を「おこす」と読むこともありますが、その場合、「向こうからこちらに送ってくる」という意味になりますので、ベクトルが逆になりますね。これは現代語では「よこす」と言います。 ゆ ゆかし 形容詞(シク活用)ある対象に対して、心がそこに「行かし(行きたい)」ということを示す形容詞です。あくまでも心の問題であり、実際に行くわけではありませんので、「見たい」「聞きたい」「知りたい」などと、文脈にあわせて訳すのが適切です。特定の話題にしばられない場合は、「心ひかれる」と訳しましょう。 ゆくりなし 形容詞(ク活用)「ゆく」は擬態語で、「ゆくゆく」「ゆくらゆくら」「ゆくりか」など、いくつかの語になっていきました。これらは「動揺する様子」「安定しない様子」「揺れ動く様子」などを示しています。「ゆくりなし」は、そういった「動揺」や「不安定」を導くような「突然」で「不意」の出来事に用いられるようになりました。「ゆくりなし」の「なし」は、「無」ではなくて、「はなはだしくそのようである」という意味の接尾語です。 ゆゆし 形容詞(シク活用)「斎(ゆ)」という語が重なって形容詞化しました。「斎」は「神聖でおそれおおく、近づきがたい」と思うものに使用します。そのことから、霊的な存在感ゆえに忌避したいものに対して「ゆゆし」と形容するようになりました。人智を超えた存在の話題に使用していれば、「不吉だ」「神聖だ」などと訳しますが、人間世界の話に使用していれば、程度面で「並々でない」、プラスの文意で「すばらしい」、マイナスの文意で「ひどい」などと訳すことになります。 よ よし 形容詞(ク活用) / よろし 形容詞(シク活用)「よし」が「第一級」のほめことばであるのに対して、「よろし」は「まあまあの水準には達している」という程度のほめことばです。大学の評定でいえば、「よし」が「優」で、「よろし」は「可」という感じです。 よに【世に】 副詞 / 連語もともとは「名詞」+「格助詞」であり、「世の中に」「世間では」の意味になります。「この世の中に~である」「この世の中に~ない」という言い方は、「具体的な実際の世間」を意味しているというより、一種の強調表現として用いられることもありますよね。その場合の「よに」は、「副詞」として分類して、「実に~だ!」「決して~でない!」という意味で訳します。