よに【世に】 副詞 / 連語

世の中に → 実に

意味

副詞

(1)実に・非常に・まことに・本当に・たいそう

(2)決して(~ない)・断じて(~ない) *打消表現を伴う

連語【名詞+格助詞】

(1)世の中に・世間では

ポイント

もともとは「名詞」+「格助詞」であり、「世の中に」「世間では」の意味になります。

「この世の中に~である」「この世の中に~ない」という言い方は、「具体的な実際の世間」を意味しているというより、一種の強調表現として用いられることもありますよね。

その場合の「よに」は、「副詞」として分類して、「実に~だ!」「決して~でない!」という意味で訳します。

ああ~。

「こんな美味しいものはこの世の中にこれだけだよ!」とか、「こんなばかなことはこの世の中にないよ!」なんていう言い方は、「本当にこれだけだよ!」とか「断じてないよ!」とか言っていることになるもんね。

はい。

ただ、こういう変遷を遂げている語は、「世の中にない」とも訳せるし、「決してない」とも訳せるというケースがけっこうありますので、分類にはそんなにこだわらないようにしましょう。

ちなみに『源氏物語』では、もともとの連語の使い方で「世の中に・世間では」の意味になることのほうが多いです。

「世にあふ」「世にあり」「世にいづ」「世にしらず」「世になし」とか、よく目にする「決まった言い回し」もあるよね。

そういった「世に○○」という慣用表現の場合は、たいてい「世の中に・世間で」という連語のほうの意味になりますね。

対して、副詞になりやすいケースとしては、

(a)下に打消表現があるパターン
(b)形容詞・形容動詞を修飾するパターン

あたりですね。ただ、これも絶対ではないです。

例文

梨の花、よにすさまじきものにして、近うもてなさず、はかなき文つけなどだにせず。(枕草子)

(訳)梨の花は、実に【非常に】興ざめなものとして、身近では取り扱わず、ちょっとした手紙を結びつけたりさえしない。

かやうのこと、おのれはよにうるさく覚ゆるなり。(徒然草)

(訳)このようなことは、自分には実に【非常に】わずらわしく思われるのである。

文はよに見たまはじ。ただ、言葉にて申せよ。(大和物語)

(訳)手紙は決してご覧になるまい。ただ、言葉で申し上げよ。

その御男君達四五人おはして、いと今めかしう世にあひ、(栄花物語)

(訳)その(堀河殿の)ご子息たちは四、五人いらっしゃって、たいそう当世風で時流にのって栄え

世にあらん者のむこになして、出仕なんどをも心やすうせさせんとすれば、世になき者を思ひそめて、(平家物語)

(訳)世間で認められている【世の中で栄えている】ような者の婿にして、奉公などをも安心してできるようにしようとするところ、身分の低い女を思いはじめて、

世にしらず聡うかしこくおはすれば、あまり恐ろしきまで御覧ず。(源氏物語)

(訳)(光源氏が)世に例がなく聡明で思慮深くいらっしゃるので、(帝は)ひどく恐ろしいほどに御覧になる。