自然の成り行き
意味
① 自然と・自然に・ひとりでに
② たまたま・偶然
➂ もし・万一 *仮定表現を伴う
ポイント
「己」+上代の連体助詞「つ」+「柄」です。
「おの」は、「自分」という意味になることもありますが、根本的には「それ自体」ということです。
「つ」は、体言と体言を結んで「の」のはたらきをすることばで、現代語でも「目つ毛」などに残っていますね。
「から」は、「理由」「経緯」「出発点」などを示す語です。
あわせると、「それ自体の成り行きで」というような意味であり、端的に訳すと「自然と」「ひとりでに」ということになります。
自然の成り行きだから、「たまたま」「偶然」という意味でも使われるんだな。
そうです。
下に仮定表現を伴い、未来のことに用いる場合には、「もしも〜」「万一~」「ひょっとして〜」という訳がしっくりくることが多いですね。
なお、同じ字をあてることばに「自ら」があるのですが、「みづから」の「み」は「身」であり、「自分自身で」ということを示しています。
「おのづから」は「自然の成り行きによって」、「みづから」は「自分自身の意志によって」という区別をしたうえで、セットで覚えておくといいと思います。
例文
母、物語など求めて見せたまふに、げにおのづから慰みゆく。(更級日記)
(訳)母が物語などを探して(私に)お見せになるので、実に自然に心が晴れてゆく。
おのづから、事の便りに都を聞けば、(方丈記)
(訳)たまたま、事のついでに都のことを聞くと、
おのづから後まで忘れぬ御事ならば、召されてまたは参るとも、今日は暇を給はらん。(平家物語)
(訳)もしも後々まで(私を)忘れないというお考えであれば、お呼びの際に再び参上するが、今日はおいとまをいただこう。