ことなり【異なり・殊なり】 形容動詞(ナリ活用)

異!!

意味

(1)違っている・異なっている・別である

(2)特別だ・格別だ

ポイント

「異」「殊」という漢字をイメージできれば、訳しやすい語だと思います。

「異なっている」「特別である」ということは、「状態や性質を意味している」といえるので、「ことなり」でまるごと一語の形容動詞と考えます。

ことなり」じゃないんだな。

「見ることなり」とか「飛ぶことなり」などと言う場合、「こと」を漢字で書くとすれば「事」ですね。

この場合の「事(こと)」は、何かの状態や性質を意味しているわけではなく、「形式名詞」と考えられます。つまり「体言」の「こと」ですね。

このときの「なり」は、体言に付いている「断定の助動詞」と考えます。

「異なり」「殊なり」の場合は、「違う・特別だ」という状態や性質を示しているから、「まるごと一語の形容動詞」と考えるけど、「事なり」の場合には、「体言+断定の助動詞」と考えるんだな。

そういうことになります。

ひらがなで書かれると見分けが難しいのですが、がんばって文脈判断しましょう。

おまけとして、「なりの識別」について貼っておきます。

例文

その調べ、波の上にひびきて、かの潯陽江のほとりに、琵琶を聞きし昔語りにことならず。(十訓抄)

(訳)その音色は、波の上に響いて、あの潯陽江のほとりで(白居易が)琵琶を聞い(て漢詩をつくっ)た昔話と異ならない【同じである】。

衣着せつる人は、心ことになるなりといふ。(竹取物語)

(訳)(天人が)衣【天の羽衣】を着せた人は、心が(普通の人と)異なる状態になるのだという。

かくことなることなき人を率ておはして、時めかし給ふこそ、いとめざましくつらけれ。(源氏物語)

(訳)このように格別であることもない人を連れていらっしゃって、かわいがりなさるのは、たいそう心外で苦痛である。