いつしか【何時しか】 副詞

意味

(1)いつ~(だろう)か

(2)早く *意志や願望を伴う

(3)早くも・早速

(4)いつの間にか・知らないうちに

ポイント

代名詞「いつ」に、強調の副助詞「し」と、係助詞「か」がついた連語です。

そのため、もともとは(1)のように「いつ~だろうか」という疑問文として使用されます。副詞というよりは、連語としての用い方ですね。

そのことばを、「『いったいいつ』って思うほどだ」という意味で使用していくうちに、(2)(3)(4)の用法が出てきました。

ああ~。

「いつになったら実現するのだ!?」って「待ちこがれているケース」だったら、(2)の「早く(しよう・してほしい)」ということになるし、

「ええい、いつまでも待ってられない!」って「実行しちゃうケース」だったら(3)の「早速」ということになるし、

「え? いつ実現してたの?」って「すでに起きていることにおどろいているケース」だったら、(3)の「いつの間にか・知らないうちに」ということになるってことだな。

そうそう、そんな感じです!

例文

いつしか梅咲かなむ。来むとありしを、さやある。(更級日記)

(訳)早く梅が咲いてほしい。(継母は梅が咲くころ)来ようということであったが、そうであるのか。

願望の終助詞がありますので、「早く」と訳します。

「いつ」を「待ち望む」気持ちですね。

いつしかと心もとながらせたまひて、急ぎ参らせてご覧ずるに、めづらかなる児の御かたちなり。(源氏物語)

(訳)(帝は)早く(皇子を見たい)と待ち遠しくお思いになって、急いで参上させてご覧になると、めったになくすばらしい子のご容貌である。

「意志や願望の表現」が省略されていますが、文脈上「あるもの」と考えて、「早く(~たい)」と訳します。

殿、いつしか抱き取りたまひて、膝に据ゑたてまつりたまへる、いとうつくし。(枕草子)

(訳)殿【藤原道隆】は、(松君を)早くも【早速】抱きとりなさって、膝に乗せてさしあげていらっしゃる、(その松君は)たいそうかわいらしい。

「もう待っていられないぞ」という様子を示しているので、「早くも」「早速」などと訳しましょう。

うぐいすばかりぞいつしか音したるを、あはれと聞く。(枕草子)

(訳)うぐいすだけが、いつの間にか鳴いているのを、しみじみとした趣きがあると聞く。

「気づいたらもうそうなっていた」という様子を示しているので、「いつの間にか」「知らぬ間に」などと訳します。