亀山殿の御池に 『徒然草』 現代語訳

「亀山殿」というのは、後嵯峨天皇が設置した亀山御所のことです。

現在の天龍寺にあたります。

大覚寺統(南朝)の祖といわれる亀山天皇は、後嵯峨の皇子です。

亀山殿の御池に、~

亀山殿の御池みいけに、大井川の水をまかせられんとて、大井の土民に仰せて、水車みずぐるまを造らせられけり。多くの銭を賜ひて、数日に営み出だして、掛けたりけるに、おほかためぐらざりければ、とかく直しけれども、つひに回らで、いたづらに立てりけり。

亀山殿の御池に、大井川の水を引き入れなさろうとして、大井の土地の住民にお命じになって、水車を造らせなさった。多くの金銭をお与えになって、数日かけて造り上げて、(川に)かけたところ、まったく回らなかったので、あれこれと直したけれども、最後まで回らないで、(水車は)むだに立っていた。

さて、~

さて、宇治の里人を召して、こしらへさせられければ、やすらかにひて参らせたりけるが、思ふやうに廻りて、水を汲み入るることめでたかりけり。

そこで、(水車のある)宇治の里の人をお呼び寄せになって、造らせになさったところ、たやすく組み立てて献上したが、(その水車は)思い通りに回って、水を汲み入れることが見事であった。

万にその道を知れる者は、~

万にその道を知れる者は、やんごとなきものなり。

すべてにおいてその道を知っている者は、尊いものである。