GET!
意味
(1)手に入れる・身に受ける
(2)理解する・わかる *「心を得」「意を得」などのかたちで
(3)得意とする・会得する
(4)~ことができる *「~ことをえたり」などのかたちで
(5)~できる *補助動詞として
ポイント
「得」は、漢字のとおり、何かを入手することを意味しています。
シンプルに「手に入れる」という意味だけではなく、「(知識を)得る」「(能力を)得る」という意味合いで使用されることも多い動詞です。
獲得するものが「知識」であれば、「理解する」などと訳し、「能力」であれば、「~できる」とか「得意とする」などと訳します。
たしか、
え~ず
の「え」が、もともとは動詞「得」だったって聞いたことがあるな。
「不可能」を表す構文ですね。
「ず」で否定されるので、結果的には「できない」と訳しますが、「え~ず」の「え」の部分だけでいえば、「可能」を意味していることになりますね。
「得」は、「GETする!」っていう意味だけど、文脈次第で、「理解する」とか「~できる」なんていう訳になるんだな。
そうですね。
あと、文法的な注意点として、「ア行」で活用する動詞は、この「得」だけだと覚えておくといいですよ。
「心得」「所得」といった複合動詞も「ア行」で活用しますが、語尾が「得」なので、結局は「得」です。
現代語だと、「言う」とか、「笑う」とかは、「ア行」だよね。
それらは、未然形だけ「ワ」なので、「ワア行」で活用すると言われますね。
現代文法の「ワア行」で活用する動詞は、古文では「ハ行」です。
古文では、「ハ行」はかなりありますけれども、「ア行」は「得」くらいです。
「射る」に「ず」をつけると「いず」になるけど……
「射る」の「い」は、「やいゆえよ」の「い」なので、「ヤ行」です。
「植う」とか「飢う」とか「据う」とかの「う」は……
「植う」「飢う」「据う」の「う」は、「わゐうゑを」の「う」なので、「ワ行」です。
そのため、これらに「ず」がつくと、「植ゑず」「飢ゑず」「据ゑず」になります。
「覚えず」とか「見えず」とかの「え」は……
これらは「覚ゆ」「見ゆ」であり、「やいゆえよ」の「ヤ行」です。
はえ~。
じゃあ、「ア行」に見えてしまう動詞も、「ヤ行」や「ワ行」なんだな。
そうですね。
「ア行」で活用する動詞は、「得」と、「心得」「所得」といった、「得」につながる複合動詞だけと考えて大丈夫です。
例文
いかで、このかぐや姫をえてしがな、見てしがな。(竹取物語)
(訳)なんとかして、このかぐや姫を手に入れたいものだなあ、結婚したいものだなあ。
罪うることと常に聞こゆるを、心憂く。(源氏物語)
(訳)(生き物を捕まえるのは)仏罰を身に受けることだと、いつも申し上げているのに、(やめないのは)情けなく(思われることよ)。
これかれえたるところ、えぬところ、互ひになむある。(古今和歌集)
(訳)それぞれ得意にしているところと、得意にしていないところが、お互いにある。
盗人これを見るに、心もえねば、これは、もし鬼にやあらむと思ひて、(今昔物語集)
(訳)盗人はこれを見るが、意味もわからないので、これは、もしかして鬼であろうかと思って、
竜の首の玉取りえずは帰り来な。(竹取物語)
(訳)竜の首の玉を取ることができないなら帰ってくるな。