だに 【副助詞】

意味

① せめて~だけでも (~したい・してほしい・しよう・せよ) *最小限の限定

② ~さえ (~ない) *類推

ポイント

「だに」は、ただに」が由来であると言われています。「唯一」の「唯」ですね。そのことから、「だに」がついている語は、「最小限」に限定されているものと考えましょう。

「最低限これだけはあってほしい」と思う気持ちや、その「最低限あってもよさそうなもの」が「ない」という場合に使用します。

「ただ一つ」とか「ほんの少し」みたいなニュアンスだな。

そうですね。

だから、願望・意志・命令などの文意で用いられると、「せめて~だけでもしてほしい(したい・しよう・せよ)」といった訳し方になりますね。

たとえば、「声をだに聞かせたまへ」という文だったら、「せめてだけでもお聞かせください」といった訳になります。

お留守番のときに、何か食べたくなって、「せんべいだに食ひたし」なんて言ったら、「せめてせんべいだけでも食べたい」っていうことなんだな。

そうです。

それで、「戸棚にせんべいくらいあるんじゃないかな」って思って探しても、残念ながら出てこないとき、「せんべいだになし」って言ったら、「せんべいさえない」っていうことなんだな。

そうです。

ちょっと意味がわからないのは、どうしてその「せんべいだになし」っていう表現が、「類推」の用法ってなるんだ?

他のお菓子もなくて、一番ありそうだと思っていたせんべいもなかったから、「せんべいだになし」という表現になります。

もしも戸棚を探したときに、「マカロン」とか「クッキー」とか「ヨックモック」とかが出てきたら、「せんべいさえない」とは言わないですね。

ああ~。

たしかに、「ヨックモック」があったら、「しめしめ、おいしいものがあったぞ」と思ってそのままバクバク食べて終了だな。

状況的に、「せんべいが一番ありそう」って思ってたわけですよね。

つまり、「最低限ありそうなもの」だったのです。

それが「ない」と表現しているわけだから、同時に「他のお菓子もない」ことを意味していることになります。暗に、「類似のものを推察」していることになるので、「類推」と言います。

「一番ありそうなもの」を否定することによって、「他のものはなおさらない」ということを言外で表現できているということなんだな。

例文

散りぬとも香だに残せ梅の花恋しき時の思ひ出にせむ (古今和歌集)

(訳)散るとしても せめて香りだけでも残せ 梅の花よ 恋しい時の思い出にしよう

光やあると見るに、蛍ばかりの光だになし。(竹取物語)

(訳)光があるかと見ると、蛍ほどの光さえない。