あはれなり 形容動詞(ナリ活用)

なんも言えねえ・・・

意味

(1)しみじみとした趣きがある・趣き深い

(2)かわいい・いとしい・心ひかれる

(3)立派だ・感心だ・すばらしい

(4)気の毒だ・かわいそうだ

(5)悲しい・さびしい

(6)愛情深い・尊くありがたい

*「あはれ」のかたちで、「感動詞」「名詞」の使い方もある。

ポイント

「あはれ」は、心が強く動かされた際の、ことばにならない嘆声です。

形容動詞として使用される場合、「じーんとして、ため息しか出ない状態」に広く用いられますので、訳語も多岐にわたります。文脈にあわせて、適訳を考えましょう。

「あはれなり」じゃなくて、「あはれ」のかたちでもけっこう出てくるよね。

もともと実際に「あはれ」と言っているわけですからね。

感動詞としての用法も多いです。現代語訳では「ああ」としておけばいいですよ。

あとは、「あはれ」を「主語」として用いている場合には、「名詞」と考えましょう。

名詞の場合、「(しみじみとした)情趣・愛情・人情・悲哀」などと訳します。

「名詞」と、「形容動詞の語幹」というのは、いったい何が違うんだ?

「形容動詞」というものは、文字通り、対象の「状態・性質」を形容・・するものなので、「何か」に対して・・・「趣き深い」と述べていることになります。

その一方、「名詞」というのものは、物体や概念を呼ぶための「名称」なので、話題になっている「何か」の状態や性質をくわしく述べているわけではありません。

たとえば、「心なき身にもあはれは知られけり」という使い方は、「趣きを感じる心がない私の身にも、しみじみとした趣きは理解される」という意味になります。

この場合、「あはれ」という「概念の名称」をテーマとして出しているわけです。これは、「何か」の「状態・性質」を形容しているわけではなく、「あはれ」という概念語そのものを主題として提示しているのです。

ちょっとややこしい話ではあるけれども、「主語になる」のは「名詞」だけの特徴だから、文法上「主語」になっていたら、「名詞」と考えればいいんだな。

そのとおりです。

あと、「あはれ(なり)」は、同じ「趣き深い」という意味をもつ形容詞「をかし」とよく対比されるので、「をかし」の説明も貼っておきます。

例文

烏の寝所へ行くとて、三つ四つ、二つ三つなど飛び急ぐさへあはれなり。(枕草子)

(訳)烏が寝床へ行こうとして、三羽四羽、二羽三羽などと飛び急ぐ様子までしみじみと趣き深い

わがものの悲しきをりなれば、いみじくあはれなりと聞く。(更級日記)

(訳)自分が悲しい時なので、たいそう気の毒だと思って聞く。

あはれなるもの。孝ある人の子。

感心なもの。孝心のある子ども。

あはれなりつる心のほどなむ忘れむ世あるまじき。(更級日記)

(訳)愛情深かった(あなたの)心のほどを忘れることはあるまい。

若葉の、梢すずしげに茂りゆくほどこそ、世のあはれも、人の恋しさもまされ。(徒然草)

(訳)若葉の、梢が涼しげに茂ってゆくころあいこそ、世の中のしみじみとした情趣も、人の恋しさも強まるものだ。

これは、

あはれも ー 人の恋しさも ー まされ
 主語①     主語②  ー  述語

という文構造になっていますので、「あはれ」の文節は主語になっています。

「主語」には、「名詞(体言)」しかなることができませんので、ここでの「あはれ」は「名詞」です。