おとなふ【音なふ・訪ふ】 動詞(ハ行四段活用)

意味

① 音を立てる・声を出す・声をかける

② 訪問する・訪れる

➂ 手紙を出す

ポイント

「音」に接尾語「なふ」がついて一語化したものです。

「なふ」は、その動作や行為をするということで、「音なふ」の場合は「音を出す」ということになります。

誰かを訪問するときは、音を立てて来訪を知らせますので、平安時代には、そのまま「訪問する」という意味でも用いられました。

ああ~。

いまでも、呼び鈴を鳴らしたり、ドアをノックしたりするもんな。

「訪問する」という意味が定着していったことから、実際に出向かずに「手紙で尋ねる」場合にも、「おとなふ」が用いられるようになっていきました。

例文

怪しと思ひて、寄りておとなひけれど、音なし。(宇治拾遺物語)

(訳)変だと思って、(部屋に)寄って声をかけたけれど、物音もない。

このわたりにおとなふ折あらむついでに、かくなむ言ひしと伝へ給へ。(源氏物語)

(訳)このあたりに訪問する時があればその機会に【あるような機会に】、このように言っていたとお伝えください。