とどめておけずにあふれる思い
意味
愛し
(1)かわいい・いとしい
(2)心ひかれる・すばらしい
悲し・哀し
(1)悲しい・切ない・残念だ
(2)気の毒だ・かわいそうだ
ポイント
「~かぬ」という補助動詞がありまして、「かなし」も同根のことばだと言われます。
「~かぬ」は、不可能を表し、何かを堪えたり、押しとどめたりすることができないという文意で使用されます。
「かなし」も似たように、「ある対象に対するあふれる気持ちを押しとどめることができない」という意味合いです。
具体的には、「(a)大切な人に対する愛情」または「(b)死別などにおける悲哀」などを意味します。
ああ~。
たしかに、どちらの場合でも、「気持ちがあふれ出てしまう」という感じだね。
(a)を漢字で書くのであれば「愛し」で、(b)を漢字で書くのであれば「悲し」ということなんだな。
だいたいそうですね。
「かなし」が問われている場合には、「かわいい・いとしい系」の意味なのか、「悲しい系」の意味なのかを文脈で判断する必要があります。
それは上級者じゃないと無理だろ。
経験上、試験で問われるのは「愛し」のほうの意味が多いですし、「悲し」の場合には、「悲」の漢字が使用されていることが多いので、ひらがなで書いてある場合には、まずは「愛し」の意味をあてはめてみるのがいいですよ。しっくりこなかったら「悲し」のほうの意味をあてる感じで……。
ただ、これはあくまでも確率の話に過ぎないので、結局は丁寧に文脈をつかむ必要がありますね。
例文
わがかなしと思ふむすめを仕うまつらせばや。(源氏物語)
(訳)自分がいとしい(かわいい)と思う娘を、(光源氏に)お仕えさせたい。
女、いとかなしくて、後に立ちて追ひゆけど、え追ひつかで、清水のある所に伏しにけり。(伊勢物語)
(訳)女は、たいそう悲しくて(切なくて)、後から出発して追って行くが、追いつくことができなくて、清水のある所で倒れてしまった。
ふと天の羽衣打ち着せたてまつりつれば、翁を、いとほし、悲しとおぼしつることも失せぬ。(竹取物語)
(訳)(かぐや姫に)さっと天の羽衣をお着せ申し上げたところ、翁を、気の毒だ、かわいそうだとお思いになる気持ちも消えてしまった。