パッチン!
意味
(1)ちょっと・少し・なにげなく *軽度
(2)さっと・ぱっと *即時・瞬時・勢いよく
(3)ふと・ふいに *突然
(4)はっきり・くっきり *明確・明瞭
(5)すっかり・まったく *強調的に
ポイント
接頭語「うち」は、動詞「打つ」から来ていると言われます。もとは、「さっと勢いよく打つ動作」を示しているのですね。
実際に何かを打っているのであれば、動詞「打つ」+別の動詞という複合語になりますが、実際に打っているのでない場合、「うつ」は接頭語です。
接頭語として他の動詞につくと、副詞的に様々な訳になります。ただし、単に語調を整えるだけの使い方もあるので、訳出しないことも多いです。
「うち出づ」とか「うち絶ゆ」とか、いろんな語についているけど、実際にぶっ叩いているわけじゃなければ、接頭語として考えるということだな。
そうですね。
記述問題であれば、無理に訳出しなくてもよいのですが、選択肢問題であれば、文脈に応じて、(1)~(5)のような表現をつけている可能性があります。
でも、「少し」と「くっきり」って、ぜんぜん違うよね。
「打つ」という動作をもとにした語なので、「打つ」の特性の多様さが、そのままニュアンスとして残っているのですね。
自分の手をパンッと叩いてみましょう。
その様子というのは、様々な受け取り方ができます。
◆ 軽度である → ちょっと・少し・なにげなく
◆ 即時・瞬時である → さっと・ぱっと
◆ 突然である → ふと・ふいに
◆ 明確・明瞭である → はっきり・くっきり → すっかり・まったく
・・・たしかに。
そのため、「うち○○」という動作は、訳に出すのであれば、いろいろな可能性があります。
たとえば「うち笑ふ」であれば、「ふいに笑う」「少し笑う」となりやすいのですが、文脈によっては、「はっきり笑う」「にっこり笑う」などと訳す可能性もあるということです。
例文
馬を走らせて山にうちいりて見ければ、(今昔物語集)
(訳)馬を走らせて、山にぱっと【勢いよく】入って見たところ、
うちおどろきたれば夢なりけり。(更級日記)
(訳)ふっと【ふいに】目が覚めると、夢であった。
また、時の間の煙ともなりなむとぞ、うち見るより思はるる。(徒然草)
(訳)また、時間が経てば(火事などで)きっと煙にもなるだろうと、ちょっと見るとすぐに思われる。
うちわたす 遠方人に もの申す我 そのそこに 白く咲けるは 何の花ぞも (古今和歌集)
(訳)ずっと見渡す 遠方の人に ものを申し上げる私 それそこに 白く咲いているのは 何の花か