わざと【態と】 副詞

入念に意識して……

意味

(1)わざわざ・故意に・意図的に

(2)本格的に  *多く「わざと+の+名詞」のかたち。

(3)とりわけ・特別に・格別に *多く「わざと+形容詞・形容動詞」のかたち。

ポイント

「わざと」は、意図をもってする行為につきます。

多くの場合は、(1)のように「わざわざ・故意に・意図的に」と訳せば文意に合います。

逆に、「わざとなし」「わざとならず」などと表現されている場合は、意識的ではない行為を指すと考えましょう。

「わざと」は、「意図的である」ということから、(2)のように「本格的」と訳したり、(3)のように「特別に・格別に」と訳すこともあります。

(1)の意味は、現代語でも残っているね。

現代語だと、「わざとやってやったぞ!」というように、ちょっと悪意がこもったニュアンスになることも多いのですが、古語ではシンプルに「意図して」ということなので、マイナスの意味はないと考えておきましょう。

(2)(3)の意味は現代語では失われているので、古文の試験ではむしろ(2)(3)がねらわれることがあります。

わざとの「名詞(体言)」であれば(2)
わざと「形容詞/形容動詞」であれば(3)

の意味になりやすいので、パターンを覚えておくといいですよ。

例文

その日を最後とや思はれけん、わざと兜は着たまはず。

(訳)その日を最後と思われたのだろうか、意図的に兜は着なさらない。

わざと御学問はさるものにて、琴笛の音にも雲居を響かし、(源氏物語)

(訳)本格的(漢学の)ご学問は言うまでもないものとして、琴や笛の音色【演奏】につけても宮中で評判を高くして、

御前のを下ろしたるとて、わざとめでたき冊子ども、硯のふたに入れておこせたり。(更級日記)

(訳)宮様の物をいただいたとして、とりわけ【特別に】立派ないくつかの本を、硯の箱のふたの中に入れて送ってきた。