じ 助動詞

意味

① 【打消推量】 ~まい・~ないだろう

② 【打消意志】 ~まい・~(し)ないつもりだ・~(し)ないようにしよう

ポイント

打消の助動詞「ず」には、もともと「ヌ系列」の活用(な・に・ぬ・ね)がありまして、その連体形「ぬ」に、接尾語「し」がついて「ぬし」になったものが、やがて「じ」になったと言われています。

意味としてはちょうど「推量・意志」の助動詞「む(ん)」と対になる使用法が多く、「~ないだろう」「~ないつもりだ」などと訳します。

「~まい」と訳しておけば、「打消推量」にも「打消意志」にも通用するよね。

はい。

「~まい」は、「ないだろう」「ないつもりだ」どちらの意味にも当てはまりますので、字数制限が短めのときなどは非常に便利ですね。

「打消推量」なのか「打消意志」なのか、どっちかわかんないときにも便利だよね。

……できれば、そのどちらなのかを考えてほしいところですが、たしかにそういうときにも「まい」という訳語は便利ですね。

なお、意味的に似ている「まじ」という助動詞が主流になっていったことで、「じ」はだんだん使用数が減っていきました。

「じ」に比べると「まじ」のほうが、「当然そうならない」という確信の強さがあります。

そういうこともあり、「じ」の意味を強めるときには、副詞「え」「よも」などを伴うことが多かったのです。

例文

月ばかりおもしろきものはあら。(徒然草)

(訳)月ほど趣深いものはあるまいないだろう】。

一生の恥、これに過ぐるはあら。(竹取物語)

(訳)生涯における恥、これにまさるものはあるまいないだろう】。

残しおかと思ふ反古ほうごなどり捨つる中に、(徒然草)

(訳)残しては置くまい【置かないつもりだ】と思う不要となった古い紙などを破り捨てる中に、

身をえうなきものに思ひなして、京にはあら、あづまの方に住むべき国求めにとて、(伊勢物語)

(訳)(自分の)身を役に立たないものとことさら思って、京には住むまい【住まないようにしよう】、東国の方に住むのに適した国を探し求めに(行こう)と思って、