病は気から
意味
(1)病気がちだ・病気が重い・危篤だ
ポイント
病気になると熱が出て体温が上がります。それがそのまま「病気が重い」の意味になったのが「篤し」だと考えられています。
「あつし」とひらがなで書かれていると「熱し」「暑し」「厚し」「篤し」のどれなのかわからなくなるのですが、このうち「篤し」だけが「シク活用」なので、終止形以外なら判別可能です。
「体が熱い」ことが「篤し」になっていったのに、活用の種類が変わるんだな。
おおむねの傾向なのですが、「ク活用」は「物体的・客観的」な形容詞で、「シク活用」は「心情的・主観的」な形容詞なのです。
「温度が高い」という意味の「熱し」は、「物体的・客観的」な現象なので、「ク活用」になりますが、「病が重い」というのは、場合によっては見ただけではわかりませんよね。本人にしかわからないことも多いですし、お医者さんにしかわからないことも多いです。
そういう分別もあって、「篤し(病が重い)」という、「見ただけでみんながすぐにわかるものではない状態」については、「シク活用」になっていったのだという説があります。
ああ~。
たしかに、「寄生虫がいて具合が悪い」とか、見ただけではわかんないもんな。
それに、「病は気から」とも言いますしね。
例文
恨みを負ふ積もりやありけむ、いとあつしくなりゆき、もの心細げに里がちなるを、(源氏物語)
(訳)(宮中の人々からの)恨みをかうことが重なったからだったのだろうか、ひどく病気がちになっていき、なんとなく心細そうで、実家に帰りがちであるのを、
中宮も御物の怪に悩ませたまひて、常はあつしうおはしまするを、院もいとど晴れ間なく思し嘆く。(増鏡)
(訳)中宮も悪霊に苦しみなさって、普段から病気が重くいらっしゃることを、院もますます心が晴れることなくお嘆きになる。
連用形「あつしく」のウ音便です。