きよらなり【清らなり】 形容動詞(ナリ活用)

最上級の美しさ

意味

(1)上品で美しい・輝くように美しい・清らかで美しい (人に対して)

(2)華麗だ・豪華だ (物に対して)

ポイント

形容詞「清し」の語幹に接尾語「ら」がついて形容動詞化しました。

意味は「美しい」ということなのですが、内側からにじみ出るような第一級の美を示す語であるため、身分やオーラなどが第一級の人物にしか用いられません。

訳も単純に「美しい」とするのではなく、「上品で」「清らかで」「輝くように」などといった語を伴うことが多いです。

じゃあ、「清らなり」を見かけたら、その場面にスーパースターがいると考えればいいんだな。

そうです。

あるいは、物品・衣装・儀式などに対して、「一流の美しさである」と賛美する使い方があります。

無生物に使用する場合は、二流にはまねできない華やかさを示していることが多く、訳も「華麗だ」「豪華だ」とすることが多いですね。

まあたしかに、服や物なんかに「第一級の美しさ」というからには、スーパー貴族でしかなしえない飾り付けがされているんだろうから、「華麗だ」「豪華だ」ということになるわな。

そうなりますね。「二流とは違うぞ」というニュアンスが伴います。

「清らなり」は、選択肢問題であれば、シンプルに「すばらしい」と訳す場合もありますが、記述問題であれば「上品で美しい」とか「華麗である」とか、普通の美しさ以上の美しさであることを示せるといいですね。

同じような形容動詞に「清げなり」がありますが、「げ」は「見た目」のことであり、外面的な美しさを意味します。

その点で、「清らなり」に比べると「清げなり」のほうが、ランクが落ちる誉め言葉です。

美しさのほめ方にもレベルがあるんだな。

さらにランクが落ちると、「汚げなし」などになりますね。

「汚くはない」ってことか……。

本当にほめ言葉なのだろうか……。

ギリほめ言葉ですね。

「こぎれいである」などと訳します。

例文

世になく清げなる玉の男御子さへ生まれたまひぬ。(源氏物語)

(訳)またとなくないほど清らかで美しい玉のような皇子までお生まれになった。

立てる人どもは、装束の清らなること、ものにも似ず。(竹取物語)

(訳)(雲に)立っている人たちは、その装束のことは、何物にも似ていない。

この児のかたちけうらなること世になく、(竹取物語)

(訳)この子【かぐや姫】の容貌の清らかで美しいことは世にまたとなく、

「きよら」を「きょうら」と読んだものですが、古文での表記は「けうら」になります。