意味
① ある・いる
② 行く・来る
③ 生まれる・死ぬ
*上記以外にも、何かをする場合には広く使用される。
ポイント

「物」に「す」がついてできた動詞なので、基本的には「何かをする」という意味です。ただし、文脈に応じて、「いる」とか「行く」などと訳す必要があります。
英語でも、「do」「does」「did」が様々な行為の代用をすることがありますね。「ものす」もそれらと同じように、実質的には何か具体性のある行為を意味しています。

ああ~。
よく映画を観ていると、「You did it !(やったな!)」なんて言う時があるけど、状況に応じて、「宿題を終わらせた」とか「優勝した」とか「つまみ食いした」とか、いろんな意味になるもんな。

「ものす」もそうです。表現上は「(何かを)する」ということなのですが、訳をするときには注意が必要です。
「食べる」「書く」「言う」「聞く」など、様々な行為が当てはまるのですが、多いのは「ある」「いる」「行く」「来る」です。

でもまあ、それなら「言ふ」とか「食ふ」とかそのまま言ってほしいけどな。

『枕草子』などは、はっきりそのまま言うことが多いので、「ものす」はあまり出てきません。
『源氏物語』などは、婉曲的にぼかして言うっことが多いので、「ものす」はけっこう出てきます。
作者の文体のくせもあるでしょうけれども、やはり物語のほうが出てきやすいですね。
例文
日ごろものしつる人、今日ぞ帰りぬ。(蜻蛉日記)
(訳)ここ数日(ここに)いた人が、今日帰ってしまった。
かどかどしきところものし給ふ御方にて、(源氏物語)
(訳)とげとげしいところがおありになるお方で、
心地悪しみして、物もものし給ばで、ひそまりぬ。(土佐日記)
(訳)気分が悪くなって、ものもお食べにならないで、眠ってしまった。