
〇和歌


これやこの 行くも帰るも 別れては 知るも知らぬも 逢坂の関 (蝉丸)

花の色は うつりにけりな いたづらに わが身世にふる ながめせしまに (小野小町)

我が庵は 都のたつみ しかぞすむ 世をうぢ山と 人は言ふなり (喜撰法師)

天の原 ふりさけ見れば 春日なる 三笠の山に 出でし月かも (安倍仲麿)

かささぎの 渡せる橋に 置く霜の 白きを見れば 夜ぞ更けにける (中納言家持)

奥山に もみぢ踏み分け 鳴く鹿の 声聞く時ぞ 秋は悲しき (猿丸大夫)

田子の浦に うち出でてみれば 白妙の 富士の高嶺に 雪は降りつつ (山部赤人)

あしびきの 山鳥の尾の しだり尾の 長々し夜を ひとりかも寝む (柿本人麻呂)
