こころ【心】 名詞

中心

意味

(1)心・意識・精神・気持ち

(2)意志・意向

(3)情趣を解する心・情趣・風情・風流心

(4)道理・意味

(5)本質・中心

ポイント

「心」は、感情のはたらきを広く意味するので、「こう訳しておけばよい」という的確な訳語をひとつに決めることはできません。多くの場合、現代語の「心」と同じ使い方です。

ただ、文脈に応じて、「情趣を解する心」「風情」「道理」「意味」「中心」といった訳をすることがあるので、前後関係から意味を考えましょう。

今でもいろんな意味になるしな。

「心」「情け」「心地」といった、意味が近い語と比較して覚えておきましょう。

・・・心のはたらきのすべて。様々なニュアンスで使用される。

情け・・・心のはたらきのうち、「人情」「思いやり」「風流心」といったプラスの意味になるもの。

心地・・・場面に応じた「気分」のこと。「悪い気分」や「病気」を意味することもある。

じゃあ、「こころなし」「なさけなし」は微妙に違うんだな。

どちらも、「思いやりがない」「風流心がない」「情緒を解さない」などと訳すんですけど、「こころなし」のほうが批判の度合いが強いです。

「こころなし」「ものを思う精神そのものがない」といった感じで、「なさけなし」は、「ものを思う精神はあるんだけど、そのうち情緒を解する部分がない」といった感じです。

「ここちなし」っていうのはないのか?

あんまり多くは目にしませんけど、あります。

「ここちなし」「分別がない」とか「思慮が浅い」などと訳しますね。

「心地」が「場面に応じた気分」を意味しますから、「ここちなし」というのは、「その場面にふさわしい気分にならない」ということなんでしょうね。

ああ~。

怒っちゃいけない場面でキレだしたり、みんなで喜んでいるときに一人で沈んでいるようなのが「ここちなし」なんだろうな。

「そこはキレるところじゃないでしょ!」とか「そこは一緒に喜べよ!」みたいな。

たしかに、「え、そこでそんな気分になっちゃうの?」っていう態度は、分別をわきまえず、思慮が浅い感じに見えますよね。

例文

ただ秋の月のを見はべるなり。(枕草子)

(訳)ただ秋の月の情趣を見ているのです。

池のこころ広くしなして、めでたく造りののしる。(源氏物語)

(訳)池の中心を広く掘って、立派に造り大騒ぎする。

大きなる車、肥えたる馬、金玉のかざりも、こころあらん人は、うたて愚かなりとぞ見るべき。(徒然草)

大きな車、肥えた馬、黄金や珠玉の飾りも、思慮がある人(道理をわきまえている人)は、いやで、ばかばかしいと見るはずだ。

歌は題のこころをよく心得べきなり。(無名抄)

(訳)歌は題の意味をよく理解するべきである。

この例文の心得こころうというのは、動詞です。

「こころ」を「獲得する」ということであるため、「(本質が)わかる」とか「(意味を)理解する」といった意味になりますね。