かごとがまし【託言がまし】 形容詞(シク活用)

いかにもぐちっぽい

意味

(1)言い訳めいている・言い訳がましい

(2)恨みがましい・嘆いているようだ

ポイント

名詞「託言(かごと・かこと)」に、接尾語「かまし」がついて一語の形容詞化したものです。

「かごと」は、「言い訳・口実・恨み言」という意味であり、「かまし」「いかにも~な様子である」ということです。

そのことから、「いかにも言い訳めいている」「いかにも恨みを言うようだ」などと訳すことができます。

ただ、現在でも「~がましい」という表現は使いますので、「言い訳がましい」「恨みがましい」などと訳してしまって大丈夫です。

「かまし」は、「騒々しい」ということだから、接尾語になると「目や耳にうるさいほど~だ」というイメージになるのかな。

イメージ的にはそういう感じですね。

「かごとがまし」の場合は、実際に「言い訳や恨み言」を述べているわけではないのですけれども、見た感じ(聞いた感じ)で、「いかにもそんなふうに見える(聞こえる)」ということを意味しています。

そういう点で、「言い訳」や「恨み言」を言いたいんだろうなあという「雰囲気」がぐわっと現れ出ていることが「かまし」のもつニュアンスでしょうね。

例文

つれづれと わが泣き暮らす 夏の日を かごとがましき 虫の声かな(源氏物語)

(訳)することもなくてもちぶさたで、私が一日中泣いて過ごしている夏の日を、言い訳めいて鳴く虫【ひぐらし】の声だなあ。

「私が泣いているから、それを口実にするかのように虫が鳴いている」と解釈できます。

ただ、ここを「恨みがましく」と訳しても間違いではありません。

心のままに茂れる秋の野らは、置きあまる露に埋もれて、虫の音かごとがましく、遣水の音のどやかなり。(徒然草)

(訳)思うままに茂っている秋の野は、(葉に)置ききれない露に埋もれて、虫の声が恨みがましく(聞こえ)、遣水の音はおだやかである。