うし【憂し】 形容詞(ク活用)

意味

① つらい・ゆううつだ

② 嫌だ・気が進まない・わずらわしい

③ つれない・薄情だ・うらめしい

④ (~するのが)つらい・嫌だ *動詞の連用形につく用法

⑤ 感心だ・けなげだ・かわいい *室町以降の用法(イ音便「うい」の形になる)

ポイント

「憂鬱」の「憂」のイメージどおりの形容詞です。

動詞む」と同根のことばと考えられています。

思い通りにいかないことに対しての「嫌になってしまっている状態」を示します。

訳としては、「つらい・嫌だ」といったように、心情語として訳すことも多いです。

む」っていうことばが耳慣れないぞ。

「倦む」は、「いやになる・飽きる」という意味です。

「やりたくないことが続いて嫌になっちゃう」という場面で出てきますね。

いまでも、まずたゆまず」といった慣用表現で使用します。

「倦まず弛まず」は、「飽きたり怠けたりしない」という意味です。

ああ~。

「憂し」も、「やりたいようにできないし、思うようにいかないし、つらいわあ……」ってことなんだな。

そうですね。

多くの場合、「つらい・嫌だ」という意味で用いられます。重々しく用いることもありますが、軽い調子で「もう、やんなっちゃう!」っていうくらいで使うこともありますね。

また、相手が思うような行動を取ってくれない場合などに、対象の態度そのものを形容して、「つれない・薄情だ」などと訳すこともあります。

あとは、「動詞+うし」のかたちで、「~するのがつらい」「~したくない」という意味になる使用法に注意ですね。

⑤の「感心だ・けなげだ・かわいい」っていうのは、根本的な意味とは逆になっている気がするんだけど……。

対象の行動や心情が思うとおりにいかなくて、心がモヤモヤして「なんだか嫌になっちゃう」っていうのは、ある意味で、対象に心惹かれていて、気になっているとも言えますよね。

そのことから、「ういやつめ……」なんていうと、「俺の心をザワつかせるほどかわいいやつめ」という意味合いでも使われるようになります。

ただ、これは

a.室町時代以降
b.イ音便「うい」のかたち

という条件がつきますので、ふつうの古文の試験で問われる可能性は低いです。

辞書によっては、⑤の意味は載せていません。

例文

世の中をうしとやさしと思へども飛び立ちかねつ鳥しもあらねば (万葉集)

(訳)この世の中をつらい、恥ずかしいと思うけれども、飛び立ってしまうことはできない。鳥ではないのだから。

世の中ことわざしげくうきものに侍りけり。(紫式部日記)

(訳)世の中は、(人がかかわる)さまざまなことがあり、わずらわしいものでございました。

風いと涼しくて、帰りうく若き人々は思ひたり。(源氏物語)

(訳)風がたいそう涼しくて、帰るのがいやだ【帰りたくない】と若い人たちは思っている。

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