こほつ【毀つ】 動詞(タ行四段活用)

「ゴホッ」っと!

意味

(1)壊す・うち崩す・破壊する

ポイント

「こぼつ」ともいいます。

語源は定かではありませんが、「雷が鳴る」とか、「物を叩く」とか、打撃音のようなものを示す「こほこほ」「ごほごほ」という擬音語がありまして、そこから来ているのかなと思います。

ああ~。

何かをたたき壊すときにも「ゴボンゴボン」って音するもんね。

実際、「打撃音のような大きな音」が出る場合に用いられますので、場面としては「大きなものを解体する」ときに使われやすいです。

いまでも建築業界では「こぼち」という言葉が残っていまして、建物などを解体するときに使います。あと「あばら家」とか「壊れている家」のことを「こぼちや」と言ったりしますね。

音が立つくらいの勢いでぶっ壊すということなんだね。

そうですね。

ただ、「壊す」という訳語がなじまない場合もあります。

「解体」であっても、「破壊」というわけでもないことってありますよね。

ああ~。

たとえば「レゴ」を「ひとつひとつのブロック」に戻したくて完成しているお城とかをばらばらにするのは、解体は解体だけど、「破壊」っていうとちょっと強すぎるよね。

そうですね。

そういう状況で使用するなら、「取り外す」くらいがいいでしょうね。

たとえば『更級日記』には、長年遊びなれた家を離れることになり、あわただしく出発する前に「こほちちらす」場面があります。家を破壊しているわけではないので、建具などを「乱雑に取り外す」くらいに訳せるといいですね。

例文

犬君がこれをこほちはべりにければ、(源氏物語)

(訳)犬君がこれ【人形遊びの小さな家】を壊してしまいましたので、なおしておりますぞ。

この麻柱あななひこほちて、人みな退きて、(竹取物語)

(訳)この足場を壊して、人はみな退いて、

これも一般的には「壊す」と訳しますが、選択肢などでは「取り外す」くらいになっている可能性がありますね。

年ごろあそび馴れつるところを、あらはにこほちちらして、立ちさわぎて、(更級日記)

(訳)長年遊び慣れたところを、(外から)まる見えになるほど(几帳・御簾・障子などの)建具を乱雑に取り外して、あわただしく出発の準備をして、

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