こうず【困ず】 動詞(サ行変格活用)

こん+す

意味

(1)困る

(2)疲れる

ポイント

「困(こん)」という漢語に、サ変動詞の「す」がついたものです。

そのため、当初は「こんず」という動詞でした。

「ん」というひらがながなかった時代に、表記上は「う」と書いていたことから、そのまま「こうず」と読むようになっていったと考えられています。

「ん」はなかったのか~。

「ん」という文字が一般的に使用されるようになったのは、室町時代ですね。

でも、ずっと前から発音上はありました。

たとえば、助動詞の「む」は、平安時代には「ん」と発音していましたので、いずれ表記も「ん」になっていきました。

あとは、漢語で「ん」と発音するものをひらがなにしたい場合には、とりあえず「い」とか「う」を充てて書いていました。

じゃあ、ポンカンとかは、「ほうかう」とか「ほむかむ」とか書いていたんだな。

「ほうかう」とか「ほむかむ」といった表記を見たことはありませんが、理屈としてはありうることです。

例文

「いかに、いかに」と日々に責められこうじて、(源氏物語)

(訳)「どうなのか、どうなのか」と、毎日追及されて困って

このごろもののけにあづかりて、困じけるにや、(枕草子)

(訳)最近、物の怪にかかわって、疲れてしまったのだろうか、

ひとつめの例文の「困る」のほうの意味ですと、古文ではぶ」という動詞があって、そちらを使用することのほうが多いです。