たまふ(給ふ) 動詞(ハ行四段活用/ハ行下二段活用)

意味

〈四段活用〉 尊敬語

① お与えになる・くださる

② お~になる・~なさる・~ていらっしゃる *補助動詞の用法

〈下二段活用〉 謙譲語・丁寧語

① ~させていただく 

② ~ております

ポイント

もともとの意味は「お与えになる」というものです。

与えるほうの「これを授けたい」って気持ちと、もらうほうの「これをいただきたい」って気持ちが合致した状態である「たま・合ふ」が「たまふ」になったという説があります。

なお、実際の用例としては、他の動詞に補助的につく補助動詞の用法が圧倒的に多いです。

「〇〇たまふ」というセットで「〇〇になる」「〇〇なさる」などと訳します。たとえば「泣きたまふ」なら「お泣きになる」「泣きなさる」などと訳します。

たしかに、「笑ひ給ふ」とか、「歩きたまふ」とか、動詞についている「たまふ」はめちゃくちゃ多いな。

尊敬語補助動詞のエース中のエースですね。

このように、四段活用の「給ふ」は「尊敬語」として扱います。

主体動作主)への敬意を示す」敬語ですね。

一方、下二段活用の「給ふ」は、「謙譲語」あるいは「丁寧語」として扱います。

「給ふ」なのに「尊敬語」じゃないのか?

用例としては多くありませんが、「謙譲語」と考えて「~させていただく」と訳すものや、「丁寧語」と考えて「~ております」と訳すものがあります。

ただ、この場合の「謙譲語」「丁寧語」は、どちらで訳してもいい場合が多いので、前後の日本語から訳しやすいほうを採用すればいいですね。

「見たまへれども~」だったら、

見させていただいたが~
見ておりますが~

のどっちでもいいってことか。

そうなります。

なお、「尊敬語」なのか「謙譲語・丁寧語」なのかについては、「謙譲語・丁寧語」のほうに次の特徴がありますので、見分ける判断材料にしてください。

〈謙譲語・丁寧語の「給ふ」は……〉
 ① 下二段活用

 ② 主に補助動詞の用法(平安以降は補助動詞のみ)
 ③ 「見る・知る・聞く・思ふ」といった限られた語につく
 ④ 和歌や会話文に用いられる

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例文

いとかしこくをかしがりたまひて、使ひに禄たまへりけり。(伊勢物語)

(訳)たいそうはなはだしくおもしろがって、使いの者にほうびをお与えになった。

そこらの年ごろ、そこらの黄金たまひて、(竹取物語)

(訳)長年の間、多くの黄金をくださって、

あないとほし、この暁、城の内にて管絃したまひつるは、この人々にておはしけり。(平家物語)

(訳)ああかわいそうだ、今日の暁、平家の城の中で演奏をしなさっていたのは、この人たちでいらっしゃったのだなあ。

夜の殿に入らせたまひても、まどろませたまふことかたし。(源氏物語)

(訳)ご寝所に入りになっても、うとうとと眠りになることもむずかしい。

この例文の「たまふ」には、直前に助動詞「す」の連用形である「せ」がついていますね。

このように、「~せたまふ」「~させたまふ」というセットになっているときの助動詞「す」「さす」は、多くの場合「尊敬」の意味です。

「尊敬の助動詞」+「尊敬語」のセットであり、「最高敬語」になります。

このときの「~せたまふ」「~させたまふ」の「す」「さす」が「使役」の意味になることもありますが、この例文の「寝室に入ること」や「うとうとと眠ること」は明らかに「貴人自身の行為」であって、「誰かにさせている」わけではありませんので、典型的な「最高敬語」です。