いちやく時の人
意味
(1)時流に乗って栄える
(2)寵愛を受ける
ポイント
「時」に接尾語「めく」がついてできた動詞です。
「~めく」は、名詞や形容詞・形容動詞の語幹などにつき、「~のようになる」「~のように見える(感じられる)」といった語をつくります。
ああ~。
「春めく」なんて、今でも使うもんな。
古文では、「いまめく」とか、「狩衣めく」とか、いろいろな語について動詞を作りました。
平安前期・中期には、そもそもの用法として名詞につく場合が多かった「めく」ですが、院政期には「さざめく」「ひしめく」といったように、擬音語や擬態語と合成することが増えていきました。
でも、「時めく」って、何言ってるのかよくわからないな。
「時のようになる」「時のように感じられる」・・・?
ある人物に対して、「時代」そのもののように感じられるというニュアンスです。
たとえば、日本の音楽シーンでも、「あのころはBOØWYの時代だった」とか、「ピンクレディーの時代だった」とか言いますよね。その時期に最も勢いがあるということですね。
古代では、「時流に乗って栄える」というのは、「天皇などの権力者の寵愛を受ける」ということとほぼ同義ですから、②の意味でも使用されます。
例文
かくあやしき人の、いかでときめきたまふらむ。(宇津保物語)
(訳)このように身分が低い人が、どうして時流に乗って栄えていらっしゃるのだろうか。
いとやむごとなき際にはあらぬが、すぐれて時めきたまふありけり。(源氏物語)
(訳)それほど高貴な身分ではない方で、際立って(帝の)寵愛を受けていらっしゃる方がいた。