突然ストン!
意味
(1)急である・突然である
(2)急な(用事がある)
ポイント
「頓(とん)」という漢語がありまして、「ん」表記がなかった時代に「とに」と表記していたようです。そこからできた「とになり」が、いずれ「とみなり」になっていったと考えられています。
「とみなり」の連用形である「とみに」が、直接用言に係っていくケースは、
じゃあ、「頓」っていう漢字に「急」っていう意味があったんだな。
もともと、「屯」は「どっしりと根をはる」ということで、「頁」は「ひざまずいている人間の頭部」ということです。
「頓」は、「どっしりと頭を垂れている」という意味を持っているのですね。
たとえば「整頓」は、「ものを整えてその場に落ち着かせる」ということです。
これだけ見ると「急」というニュアンスはないように思えますが、「それまで動いていたものが急にパタッとその場から動かなくなる」という意味合いがあって、その場合の「急」という意味を中心視した熟語もけっこうあります。
たとえば「頓服」は、「急な症状において服薬すること」です。また「頓狂」は、「急におかしな言動をすること」です。「頓挫」は「急にがっくりと勢いがなくなること」です。
「とみなり」は、「急にガクっとくる」とか「急にドスンとする」の「急」がクローズアップされた形容動詞なのだな。
日本語として使用される「頓」は、「急」という意味合いが中心的なのですね。
なお、連用形「とみに」の形で、用言を直接修飾しているパターンですと、「副詞」に分類することも多いです。
あと、「とみなり」には関係ないんだけど、「頁」って、「ページ」って読む時があるよね。
どうして「ページ」が「頁」になるんだ?
もともとは、書物を構成する一枚一枚の紙は「葉(よう)」と呼んでいたようですね。
そして、「頁」という字にも「よう」という音読みがありました。
長い歴史のなかで、役人が筆記する際に、「同じ読みである早く書ける漢字」のほうに差し替えていった時代があるので、そういった経緯で「葉」のかわりに「頁」を使うようになっていったかららしいです。
合理化だったのか!
例文
とみにて求むる物見出でたる。(枕草子)
(訳)急(な用事)で求めている物を見つけた(ときはうれしい)。
とみなる召し使ひの来合ひたりつればなむ。(蜻蛉日記)
(訳)急な(用事のある)召し使いが来合わせたので(そちらへ行けなかった)。
十二月ばかりに、とみのこととて御文あり。(伊勢物語)
(訳)十二月ごろに、急の事といってお手紙がある。
この例文は、「形容動詞の語幹用法」といわれます。
ただ、当時の人としては、「とみ」という「概念」を体言として使用している感覚でしょうね。