「て」というひらがなについて、まぎらわしいのは「助動詞」か「接続助詞」かの区別です。
どちらも連用形につくからです。
さらに、助動詞「つ」の場合、「完了」と「確述・強意」の意味に区別できますので、そのどちらであるのかを考えるのも大切です。
「て」の識別
(1)完了(確述・強意)の助動詞「つ」の連用形
「活用語の連用形」についており、かつ「直後が助動詞」である「て」は、助動詞「つ」の連用形です。
さらに、次の(ⅰ)(ⅱ)を訳し分けられるといいですね。
(ⅰ)「~てけり」「~てき」などの場合は、「完了」の意味と考えます。この場合、訳は「~てしまった」または「~た」となります。
(ⅱ)「~てむ」「~てむず」などのように、「意志・推量」の助動詞が下接している場合には、「確述・強意」の意味と考えます。この場合、訳は「~てしまおう・きっと~しよう」「きっと~だろう」というように訳すことが多くなります。
(2)接続助詞
「活用語の連用形」についており、そのうえで次のどちらかを満たす「て」は接続助詞です。
(ⅰ)直後が読点(、)である。あるいは読点を補うことができる。
(ⅱ)「参りて候ふ」のように、直後に補助動詞がくる。
例文
鬼なども我をば見ゆるしてむ。(源氏物語)
(訳)鬼なども私のことはきっと見逃すだろう。
「推量」の助動詞「む」とセットになっていますので、いわゆる「確述用法」と考えて、「確述・強意」の意味で訳します。
確述用法は、「きっと~だろう」「きっと~しよう」と訳すのが一般的です。
とまれ、かうまれ、とく破りてむ。(土佐日記)
(訳)とにかく、早く破ってしまおう。
直後が意思の助動詞「む」なので、完了の助動詞「つ」の連用形「て」になります。
「意志」の助動詞とセットになっているので、意味としては「確述・強意」と考えたほうがよいです。
確述用法の場合でも、「きっと」とせずに、「てしまおう」と訳すほうが文意になじむことはけっこうあります。
髪はつややかにて、いと美しげにて、丈ばかりなり。(堤中納言物語)
(訳)髪はつややかであって、たいそう美しく見えて、身の丈ほど(の長さ)である。
どちらも形容動詞の連用形についており、直後に読点がありますので、「接続助詞」の「て」です。
なお、古文にはそもそも句読点はありませんので、ついている「、」「。」は後世に付け加えたものです。そのため、本によって付されている場所が異なります。
男もすなる日記といふものを、女もしてみむとてするなり。(土佐日記)
(訳)男もするとかいう日記というものを、女(である私)もしてみようと思ってするのである。
「してみる」の「し」はサ変動詞「す」の連用形です。
「み」は動詞「みる」の未然形です。「watch」の意味がなくなっており、ここでは補助動詞になります。
「動詞の連用形」と「補助動詞」のあいだをつなぐ「て」は、接続助詞になります。