なさけ【情け】 名詞

ココロ・いきいき・色づく・・・

意味

(1)情愛・人情・思いやり

(2)(男女の)愛情・恋情

(3)風流心・情趣を解する心

(4)風情

ポイント

漢語の「情」を「なさけ」と訓じていますので、「情」という漢字のイメージでそのままつかんでおくといいです。

「情」のパーツは「心」+「生」+「丹」です。「心が生き生きと色づく」ということですね。

基本的にはプラス面の「心のはたらき」であり、「人と人との情」であれば「人情・思いやり」、「男女の情」であれば「愛情・恋情」、「自然に親しむ情」であれば「風流心」などと訳します。

「情けなし」だと「思いやりがない」ということになるんだな。

たしか、「心なし」も「思いやりがない」って訳したと思うんだけど・・・。

「心」は、「ものを感じて、考える根本的な存在」ですね。

「情け」は、もともとは「す」と同根で、人付き合いをするときの「目に見える心遣いの所作」を意味しました。いわば、「思いやりのこもったはたらき」のことです。

このように、「心」は「存在」で、「情け」は「はたらき」ですが、実際の訳し方はかなり似ていますね。

「心」が「宝石」だとすると、「情け」は「輝き」みたいなもんか。

非常によいたとえだと思います。

例文

人柄のあはれに、情けありし御心を、(源氏物語)

(訳)人柄が立派で、情愛のあるお心を、

男女のなさけも、ひとへに逢ひ見るをばいふものかは。(徒然草)

(訳)男女の愛情も、いちずに会って契りを結ぶことをいうものだろうか、いや、そうではない。

情けある人にて、瓶に花をさせり。(伊勢物語)

(訳)風流心のある人で、瓶に花を挿してあった。