つきづきし【付き付きし】 形容詞(シク活用)

「人間の営為」と「何か」がベストマッチ!

意味

(1)ふさわしい・似つかわしい

(2)調和している

ポイント

動詞「付く」の連用形「付き」をふたつ重ねた形容詞です。

「つく」は、「ふたつのものがぴったり付いて離れない」ということであり、「つきづきし」は、その「ぴったりしている様子」を形容している語です。

類義語に「につかはし」がありますが、「につかわし」のほうは、「はじめから調和している様子」を示すことが多く、「つきづきし」のほうは、「人間の行動によって結果的に調和している様子」を示すことが多いです。

なんか、『枕草子』の最初のほうを暗唱したときに、「つきづきし」があった記憶があるな。

「冬はつとめて」のところですね。

寒い朝に、火をおこして、炭火をもって移動しているさまが「つきづきし」という場面です。

でもこれ、何と何が「つきづきし」なんだ?

冬の寒い朝の空気感と、炭火をもって歩いている営みが、調和しているということですね。

「つきづきし」は、訳をするときに、何と何が調和しているのか、補って訳したほうがいい場面が多いです。

前述したように「つきづきし」は、「人間の営みによって結果的に発生した調和」を意味していることが多いので、調和の内容の一方(または両方)はたいていの場合「人間の営為」や「人間が作った物体」になります。

ちなみに反対語は「付き無し」です。「ふさわしくない」とか「(調和を図る)手だてがない」などと訳します。こちらもよく出てくるので、セットで覚えておきましょう。

例文

いと寒きに、火など急ぎおこして、炭もて渡るも、いとつきづきし。(枕草子)

(訳)たいそう寒い折に、火などを急いでおこして、炭火を持って移動するのも、(冬の朝に)たいそう似つかわしい

いへゐのつきづきしく、あらまほしきこそ、仮の宿りとは思へど、興あるものなれ。(徒然草)

(訳)住居が(主人に)ふさわしく、理想的なのは、(現世の一時的な)仮の宿と思っても、興味のあるものである。