こちなし【骨なし】 形容詞(ク活用)

骨っぽくて洗練されていない

意味

(1)無作法だ・ぶしつけだ

(2)無風流だ・無骨だ

ポイント

「こち」は「骨」であり、「ゴツゴツしているさま」「四角四面なさま」「洗練されていないさま」を表します。それに形容詞を成立させる接尾語「なし」がついて「こちなし」となりました。

「骨っぽい!」ということであり、「洗練されて角がとれたようす」とは逆のイメージです。そのため、「無作法」「無風流」などと訳します。

礼儀や風流を身につけている人のようななめらかさがない」ということなんだね。

そういうことですね。

それなのに「無骨だ」っていう訳もあるの、なんか変だね。

この「こちなし」を漢字で表記したものに「無骨」という表現があっのですが、この「無」は当て字と言われています。

そもそも「こちなし」の「なし」は「無し」ではなくて、「はなはだしくそうである」という意味の「なし」なので、「無」の字を当てないでほしいなあとも思いますが・・・、そういうケースはときどきありました。

意味的には誤用と言えますが、中世のあたりに定着してしまったようですね。『平家物語』などにも登場します。

ああ~。

誰かが勘違いしたんだろうね。

たぶんそんなに気にしなかったんでしょうね。

「はしたなし」とか「おぼつかなし」とかも、「無し」ではないのですが、「端無し」とか、「覚束無し」といったように、「無」の字を充てている用例もあるんです。ややこしくていやですよね・・・。

くわしくはこちら。

ああ~。

このややこしいやつか・・・。

ええ。

まあややこしいのですが、覚えるべき単語の数が多いわけではないので、代表的なものを覚えておくといいと思いますよ。

あと、「こちなし」に関して言うと、「こちたし」というまったく別の形容詞がありますので、混同しないように注意しましょう。

例文

「悩ましくなん」と、ことなしびたまふを、しいて言ふも、いとこちなし。(源氏物語)

(訳)(浮舟が)「気分がすぐれないので」と、何気なく(断り)なさるのを、むりに(食べるように)言うのも、たいそう無作法で【ぶしつけで】ある。

日高く待たれたてまつりてまゐりたまひければ、少しこちなく思し召さるれど、(大鏡)

(訳)(藤原佐理は)日が高くなるまで(関白を)待たせ申し上げて参上なさったので、少々無風流にお思いになったが、

かかる間に、船君の病者もとよりこちごちしき人にて、(土佐日記)

(訳)そのような時に、船の主人である病人【紀貫之】は元来無風流な人で、

「骨なし(こちなし)」の類義語に「骨骨し(こちごちし)」があります。