意味
(1)~ている ~てある *存続
(2)~た ~てしまった *完了
ポイント
![](https://hohoemashi.com/wp-content/uploads/2020/03/%E3%82%8F%E3%81%8A%E3%81%84%E3%81%A1%E3%82%8D%E3%81%86%E3%82%A2%E3%83%83%E3%83%97-1-150x150.jpg)
「り」は特殊な助動詞です。
もともとは、「渡りあり」「旅しあり」というように、動詞の連用形に「あり」がついたものが前身です。それがつまって、「渡れり」「旅せり」となっていきました。
そのため、根本的な意味は「存在している(今それが起きている)」ということになります。
![](https://hohoemashi.com/wp-content/uploads/2020/03/%E3%81%86%E3%81%95%E3%81%8A%E3%82%A2%E3%83%83%E3%83%97-150x150.jpg)
英語でいう「進行形」みたいなもんだな。
![](https://hohoemashi.com/wp-content/uploads/2020/03/%E3%82%8F%E3%81%8A%E3%81%84%E3%81%A1%E3%82%8D%E3%81%86%E3%82%A2%E3%83%83%E3%83%97-1-150x150.jpg)
まさにそうです。
基本的には「~ている」と訳して、文意がおかしくなければ「存続」で理解しましょう。
「た」としか訳せない場合には、「完了」と考えます。
活用・接続
![](https://hohoemashi.com/wp-content/uploads/2021/08/00402-1-150x150.jpg)
助動詞「り」の活用です。
未然形 連用形 終止形 連体形 已然形 命令形
ら / り / り / る / れ / れ
直前の語は「サ行変格活用の未然形」か「四段活用動詞の已然形(命令形)」になります。
![](https://hohoemashi.com/wp-content/uploads/2020/03/%E3%82%8F%E3%81%8A%E3%81%84%E3%81%A1%E3%82%8D%E3%81%86%E3%82%A2%E3%83%83%E3%83%97-1-150x150.jpg)
接続が少々複雑ですね。
普通、「つ」の直前は「連用形」、「ぬ」の直前は「連用形」、「たり」の直前は「連用形」というように、接続がほぼ定まっているものですが、
助動詞「り」は、直前が、
サ行変格活用動詞 の 未然形
四段活用動詞 の 已然形(命令形)
となっています。
![](https://hohoemashi.com/wp-content/uploads/2020/03/%E3%81%86%E3%81%95%E3%81%8A%E3%82%A2%E3%83%83%E3%83%97-150x150.jpg)
予想以上にややこしいぞ。
![](https://hohoemashi.com/wp-content/uploads/2020/03/%E3%82%8F%E3%81%8A%E3%81%84%E3%81%A1%E3%82%8D%E3%81%86%E3%82%A2%E3%83%83%E3%83%97-1-150x150.jpg)
サ変の未然形 と 四段の已然形(命令形) につくということで、
サ 未 四 已
とか
サ 未 四 命
で覚えようとする受験生が多いですね。
![](https://hohoemashi.com/wp-content/uploads/2020/03/%E3%81%86%E3%81%95%E3%81%8A%E3%82%A2%E3%83%83%E3%83%97-150x150.jpg)
四段活用につく場合、已然形(命令形)につくってことは、
花咲けり
の「咲け」のところは、「已然形」「命令形」のどっちで答えればいいんだ。
![](https://hohoemashi.com/wp-content/uploads/2020/03/%E3%82%8F%E3%81%8A%E3%81%84%E3%81%A1%E3%82%8D%E3%81%86%E3%82%A2%E3%83%83%E3%83%97-1-150x150.jpg)
これに関してはどちらで答えても正解です。
平安時代には四段活用の「已然形」と「命令形」は同じ音ですから、「り」の直前の四段動詞について、それが「已然形」なのか「命令形」なのかは決着できません。
ただ、それ以前の時代、たとえば万葉集の表記に照らすと、四段活用の「已然形」と「命令形」は音が異なっています。その時代、助動詞「り」は「命令形」のほうについていたので、原初的には「命令形接続」です。
![](https://hohoemashi.com/wp-content/uploads/2020/03/%E3%81%86%E3%81%95%E3%81%8A%E3%82%A2%E3%83%83%E3%83%97-150x150.jpg)
じゃあ、「命令形」って決めちゃえばいいんじゃないの?
![](https://hohoemashi.com/wp-content/uploads/2020/03/%E3%82%8F%E3%81%8A%E3%81%84%E3%81%A1%E3%82%8D%E3%81%86%E3%82%A2%E3%83%83%E3%83%97-1-150x150.jpg)
大昔の活用を見ると、たしかにそうなんですけど、平安時代には、四段活用の「已然形」と「命令形」の見た目上の違いはなくなるんですよね。
そうすると、「命令形に助動詞がつく状態」のほうを変だと考えて、むしろ「已然形」と決めたほうがいいという意見もあります。
![](https://hohoemashi.com/wp-content/uploads/2020/03/%E3%81%86%E3%81%95%E3%81%8A%E3%82%A2%E3%83%83%E3%83%97-150x150.jpg)
なんと受験生泣かせなんだ。
![](https://hohoemashi.com/wp-content/uploads/2020/03/%E3%82%8F%E3%81%8A%E3%81%84%E3%81%A1%E3%82%8D%E3%81%86%E3%82%A2%E3%83%83%E3%83%97-1-150x150.jpg)
身もふたもないことを言うと、「り」の直前はもともと「已然形」でも「命令形」でもないんですけどね。
![](https://hohoemashi.com/wp-content/uploads/2020/03/%E3%81%86%E3%81%95%E3%81%8A%E3%82%A2%E3%83%83%E3%83%97-150x150.jpg)
どういうことだ?
![](https://hohoemashi.com/wp-content/uploads/2020/03/%E3%82%8F%E3%81%8A%E3%81%84%E3%81%A1%E3%82%8D%E3%81%86%E3%82%A2%E3%83%83%E3%83%97-1-150x150.jpg)
最初に話したように、「り」にかんしては、
四段動詞につく場合でいうと、もともとは「動詞の連用形」に「あり」がそのままくっついて、
咲きあり
降りあり
などと言っていたものが、
咲けり
降れり
と詰まっていったんですね。
このときの「り」だけを取り出して「存続・完了の助動詞」と見なしたわけなんです。
というわけで、
咲け り
降れ り
となっているときの、「咲け」「降れ」などは、連語がつまって結果的にそうなっただけのかたちであって、もともと「活用形」ではないのです。
ただ、「り」を独立した助動詞と分類する以上、「○○形につく」という文法的ルールは設定しておく必要があるので、後出しで考えたわけです。
四段活用で語尾が「e」になるのは「已然形」か「命令形」なので、四段活用動詞に「り」が付く場合は「已然形」か「命令形」につく、という文法ルールが生まれました。
![](https://hohoemashi.com/wp-content/uploads/2020/03/%E3%81%86%E3%81%95%E3%81%8A%E3%82%A2%E3%83%83%E3%83%97-150x150.jpg)
なるほどな。
![](https://hohoemashi.com/wp-content/uploads/2020/03/%E3%82%8F%E3%81%8A%E3%81%84%E3%81%A1%E3%82%8D%E3%81%86%E3%82%A2%E3%83%83%E3%83%97-1-150x150.jpg)
サ変動詞につく場合も、やはり「動詞の連用形」に「あり」がそのままついて、
具しあり
心地しあり
などと言っていたものが、
具せり
心地せり
と詰まっていきました。
このときの「せ」というかたちは、連語がつまって結果的にそうなっただけのかたちなんですけれど、「サ行変格活用」の「せ」は「未然形」と同じですから、「サ行変格活用」に「り」が付く場合は「未然形」につく、という文法ルールが生まれました。
![](https://hohoemashi.com/wp-content/uploads/2020/03/%E3%81%86%E3%81%95%E3%81%8A%E3%82%A2%E3%83%83%E3%83%97-150x150.jpg)
つまってできた言い方の「せ」が、たまたま未然形と同じかたちであったというわけか。
「せ」も「e音」だな。
![](https://hohoemashi.com/wp-content/uploads/2020/03/%E3%82%8F%E3%81%8A%E3%81%84%E3%81%A1%E3%82%8D%E3%81%86%E3%82%A2%E3%83%83%E3%83%97-1-150x150.jpg)
そうです。
ですから、「存続・完了」の助動詞「り」は、「e音」にしかつきません。
![](https://hohoemashi.com/wp-content/uploads/2020/03/%E3%81%86%E3%81%95%E3%81%8A%E3%82%A2%E3%83%83%E3%83%97-150x150.jpg)
そういうわけで、結果的に誕生したルールとして
サ 未 四 已
とか
サ 未 四 命
になったんだな。
![](https://hohoemashi.com/wp-content/uploads/2021/08/00102-1-150x150.jpg)
学校の授業でも「サ未四已」で覚えるといいよという先生と、「サ未四命」で覚えるといいよという先生がいます。同じ学校に混在していると迷惑ですよね。
![](https://hohoemashi.com/wp-content/uploads/2020/03/%E3%81%86%E3%81%95%E3%81%8A%E3%82%A2%E3%83%83%E3%83%97-150x150.jpg)
ちらりと学校を批判したぞ。
![](https://hohoemashi.com/wp-content/uploads/2021/08/00102-1-150x150.jpg)
試験で
あざりあへり
の「り」の直前の活用形を聞いてきて、「命令形」と答えると、×にしてくる謎の先生が実際にいますからね。
「どうして×なんですか?」と生徒が質問すると、「授業で已然形と教えたから」と言ってくるんですよ。
試験は「普遍的・一般的な正解」を導くものですから、「授業でこう教えたからこれだけが正解」とする理不尽な先生には、本家に伝わる伝統の呪
![](https://hohoemashi.com/wp-content/uploads/2020/03/%E3%81%86%E3%81%95%E3%81%8A%E3%82%A2%E3%83%83%E3%83%97-150x150.jpg)
ちょっ、今日はここまでにしておこう!
例文
富士の山を見れば、五月の晦に、雪いと白う降れり。(伊勢物語)
(訳)富士山を見ると、陰暦五月の末に、雪がたいへん白く降り積もっている。
野中に、丘だちたるところに、ただ木ぞ三つ立てる。(更級日記)
(訳)野原の中に、丘のようなところに、ただ木が三本立っている。