けなり【異なり】 形容動詞(ナリ活用) / けに【異に】 副詞

いっそうまさって・・・

意味

形容動詞として

(1)異様だ・普通と違う・尋常でない

(2)(一段と)まさっている・(特に)すぐれている

副詞として

(1)いっそう・いよいよ・格段に *多く「~より けに」の形で用いる。

ポイント

形容動詞「異なり(けなり)」は、漢字のとおり「異様である・普通でない」の意味になります。

「Aよりけなり」というように、何かと比べて使用すると、「A以上に普通でない」ということから、「Aより優れている/A以上に格別である」という意味で用います。

さて、この語は連用形「異に(けに)」の形で副詞的に使うことがほとんどであり、言い回しも「~より けに」という表現が多いです。その場合、「~よりいっそう(〇〇する/〇〇である)」と訳します。

そうすると、「けに」の形にほぼ固定され、「意味」も限定され、主に連用修飾語として用いることになりますので、「けに」は「副詞」と考えるのが一般的です。

「異様」「普通とは違う」「尋常でない」ということが、そもそも「通常とはかけはなれていること」を意味しているから、「~より」というような「比較」として用いると、「~よりもいっそうはなはだしい」というような意味合いになるんだろうね。

まさにそういうイメージです。

「~より けに」の用い方でも、「けに」が述語の中心になっている場合には「形容動詞の連用形」とみなし、「まさっている・すぐれている」などと訳すのですが、用例は多くないです。

したがって、試験の水準では、「より けに」の「けに」は「副詞」と考えてまず大丈夫です。

ほうほう。

話は変わりますが、「げに」という別の副詞と混同しないように注意しましょう。

「げに」は、「本当に」「現に」「実に」「なるほど」といった意味で、頻繁に目にする副詞です。

例文

ありしよりけに恋しくのみおぼえければ、(伊勢物語)

(訳)昔よりいっそう【格段に】恋しいとだけ思われたので、

藤大納言、人よりけにさしのぞきて、「いかが言ひたる」とのたまふめれば、(枕草子)

(訳)藤大納言は、(他の)人よりいっそうのぞきこんで、「どう言っていたか」とおっしゃるようなので、

内より、御使ひ雨の脚よりけに繁し。(源氏物語)

(訳)帝から、(源氏への)お使い(来るの)は、雨足よりいっそう頻繁である。

隙々より見ゆる灯の光、蛍よりけにほのかにあはれなり。(源氏物語)

(訳)いくつかの隙間から見える灯火の光は、蛍よりいっそう【格段に】かすかで趣き深い。

だいたいの場合は、「いっそう」または「格段に」としておけば訳語として成立します。

行ひ馴れたる法師よりはけなり。(源氏物語)

(訳)(源氏が読経する様子は)経を読み慣れている法師よりも(一段と)まさっている

形容動詞「けなり」の終止形です。

御心こそ鬼よりけにもおはすれ、様は憎げにもなければ、え疎み果つまじ。(源氏物語)

(訳)(あなたの)お心こそ鬼よりまさっていらっしゃる。様子は憎らしくもないので、すっかりきらってそっけなくすることもできない。

この例文は、「より けに」の言い回しなのですが、「おはす」が補助動詞になっているので、実質上の述語になっていません。したがって、「けに」そのものが述語の中心になっていますので、「形容動詞の連用形」と考えます。

ただ、これを「副詞」と考えても、×とまではいえません。