もどく 動詞(カ行四段活用)

モノマネ

意味

(1)まねる・似せる

(2)非難する・批判する・張り合う

ポイント

「もどく」の「もど」は、「もどる」「もどす」の「もど」と同じものと言われます。

ある行為をそのまま反復する「再現行為」を「もどく」と言い、「まねる」「似せる」などと訳します。

①の意味は、現在でも「がんもどき」や「うめもどき」などのことばに残っていますね。

「再現行為」というと、ビデオで言う「巻き戻し」みたいなもんかな。

たしかに、「もどして再生する」という感じですね。

別の人が「もどして再生する」のが「もどく」です。

場合によっては、その再生行為が、「本物」を非難しているケースってありますよね。

ああ~。

モノマネ王座決定戦とか、対象へのリスペクトが感じられない、ひどくバカにしたようなネタとかあるもんな。

政治家の言い合いとかでも、「あの人は、先週こう言ってたんですよ。『○△□~』ってね。ひどいと思いませんか、みなさん!」などいう場面がありますよね。

この『○△□~』の部分などは、ちょっとマネして言ったりするじゃないですか。

この場合、真似すること自体が、非難や批判のニュアンスを含んでいるということができます。

(1)と(2)の意味のつながりはよくわかっていないのですが、推察のうえでは、こういう流れで、「まねる」から「非難する」という意味につながったのではないかと言われています。

中世の田楽には、「もどき」という役があって、神の行いを反復したりしながら、からかったり、ちょっと反抗したりするようすで、面白おかしく伝える役割を担いました。

現在のお祭りでも「ひょっとこ」「おかめ」が出てきますが、これらは「もどき」が残ったものと言われています。

この例から考えても、「まねること」と「からかうこと」には関係がありますから、これが「非難する」という意味につながることは十分ありうることです。

そもそも、多くの社会では、歴史的にみて、「権力を公然と批判する」ってできないんですよね。処罰されますから。

そのため、「物語」のなかに権力批判をこめたり、歌のなかにこっそり混ぜたりするのですね。そういう点で、反抗心をそれとなく表明するために「もどく」という行為を利用することは、けっこう多かったはずだと思います。

「もどる」「もどす」と同根の語ということは、相手の主張とかを「そのまま相手におしもどす」みたいな感じで「張り合う」って意味になって、それが「非難する」という意味になったのかもしれないね。

例文

この七歳ななとせなる子、父をもどきて、高麗人こまうどと文を作りかはしければ、(宇津保物語)

(訳)この七歳になる子ども【俊蔭】は、父をまねて、高麗の人と漢詩を作って交換したので、

困じてうち眠れば、「ねぶりをのみして」などもどかる。(枕草子)

(訳)疲れてつい眠ると、「眠ってばかりいて」と非難される。