あし 形容詞(シク活用) / わろし 形容詞(ク活用)

最悪 > よくない

意味

あし【悪し】

(1)悪い・とても悪い

(2)みすぼらしい・いやしい

(3)下手だ・つたない

(4)不快だ・不愉快だ

わろし

(1)よくない

(2)見劣りがする・美しくない・みっともない

(3)体裁が悪い・聞こえが悪い

(4)下手だ・つたない

ポイント

古文の世界には、善悪の基準として、「よし>よろし>わろし>あし」という4つの段階がありました。

最もよいのが「よし」で、最も悪いのが「あし」です。

そのため、「あし」と評されているものがあったら、それは「きわめて悪い」ものであると判断しましょう。

「あし」は、現代語で言うと「マジ最悪」みたいな感じかな。

そうです。

記述問題であれば、「〇〇が悪い」というように、何が悪いのかがわかるように書いていれば問題ありません。

選択肢問題の場合、「とても悪い」に該当する様々なニュアンスで訳されますので注意が必要です。上に挙げた訳語以外にも、文脈次第で「臭い」「ひどい」「汚い」など、多様な訳になります。

たとえば、記述なら「気分がとても悪い」と書けばいいところを、選択肢では「ひどく不愉快だ」などと訳されるようなこともあります。

「よし」と「よろし」の関係と似たような感じで、「あし」が「最悪」であるのに対して、「わろし」は「まあ平均より下」くらいのものなのかな。

そんなイメージです!

例文

今日、風雲のけしきはなはだあし。(土佐日記)

(訳)今日は、風雲の様子がたいそう悪い

記述なら「(天候が)悪い」でOKですが、選択肢問題なら、「荒れているなどと訳す可能性があります。

精進物のいとあしきをうち食ひ、(枕草子)

(訳)精進物のとても味が悪いのを食べ、

記述問題なら「味が悪い」としておけばいいのですが、選択肢問題なら、「まずい」などと訳す可能性があります。

げす女のなりあしきが子を負ひたる。 (枕草子)

(訳)身分の低い女で身なりがみすぼらしいのが子供を背負っている。

これも「身なりが悪い」で通じますが、「みすぼらしい」などと訳す可能性がありますね。

これらのように、「あし」は、文脈によってあらゆる悪口で使用されますので、柔軟に考えましょう。

昼になりて、ぬるくゆるびもていけば、火桶の火も白き灰がちになりてわろし。(枕草子)

(訳)昼になって、だんだん暖かく(寒さが)やわらいでいくと、火桶の火も白い灰ばかりになってみっともない

「わろし」は、「いいのか悪いのかっていうと・・・悪い」という水準のことを意味する形容詞です。端的に言えば「よくはない」ということですね。

年ごろは、わろく書きけるものかな。(宇治拾遺物語)

(訳)長年の間、(炎の絵を)つたなく【下手に】描いたものだなあ。

ここも、「上手くはない」ということですね。