むつかし【難し】 形容詞(シク活用)

意味

① 不快だ・うっとうしい

② わずらわしい・めんどうだ

③ むさくるしい・見苦しい

④ 気味が悪い・恐ろしい

ポイント

動詞「むつかる」と同根の形容詞です。

現代語では「赤ちゃんがむずがる」などと使いますね。何かを不快に思って機嫌を損ねていることです。

「むつかし」はそれの形容詞版なので、中心的な訳語は「不快だ」がよいです。

「困難だ」って意味じゃないんだな。

古文で、「困難だ」という意味で使用されやすいのは「かたし」ですね。

「むつかし」が、「むずかしい」という意味でも使用されるようになるのは江戸時代からで、一般化するのはほとんど近代なので、古文で「むつかし」が問われたら、「不快だ」という意味をベースに考えてください。

例文

女君は、暑くむつかしとて、御髪すまして、すこしさはやかにもてなしたまへり。(源氏物語)

(訳)女君【紫の上】は、暑くうっとうしい【不快だ】といって、御髪を洗って、少しさっぱりとした様子にしていらっしゃった。

用ありて行きたりとも、そのこと果てなば、とく帰るべし。久しくゐたる、いとむつかし。(つれづれ草)

(訳)用があって(誰かの家に)行ったとしても、その用事が終わったら、すぐに帰るのがよい。長居をしているのは、(その家の人にとって)たいそうわずらわしい

竜胆は、枝ざしなどもむつかしけれど、(枕草子)

(訳)りんどうは、枝ぶりなどもむさくるしいが、

むつかしき事ありと言ひ伝へて、大方人もえ居つかねば、そこはただその塚一つぞある。(宇治拾遺物語)

(訳)気味の悪い【恐ろしい】ことがあると(人々が)言い伝えて、まったく人も住みつくことができないので、そこにはただその塚が一つある。