定量的なあてがない
意味
(1)頼りない・弱々しい
(2)あっけない・むなしい
(3)ちょっとした・取るに足りない・つまらない・何ということはない
ポイント
「はかなし」の「はか」は、「果」です。
「果」は、定量的な目当て・見当などを意味する名詞です。「はかなし」は、その「果」が「ない」ということなので、目当てや見当がつかないものや、つけるほどではないものに用いることになります。
その一方、「果」をかさねた「はかばかし」という形容詞がありまして、それは、「はっきりしている」「しっかりしている」という意味になります。
対義語として整理しておくといいですね。
「はかなし」は、現代語だと、(2)の「あっけない・むなしい」っていう意味だよね。
古文だと、(1)の「頼りない」で使用することが多いですね。
これは、「物質・存在としての安定感がない」ということです。「さあ、はかってくれ!」といえるほどの確固たる存在ではないということなので、「頼りない」「弱々しい」などと訳します。
(2)は、「時間的な安定感がない」ということであり、予期せずふっとなくなってしまうということです。はかるタイミングもなくすぐになくなってしまうということなので、「あっけない」「むなしい」と訳します。
(3)は、「わざわざはかるほどの安定的な価値がない」ということであり、「ちょっとした」「取るに足りない」「つまらない」などと訳します。
「はかなし」は、「物体・存在」「時間」「価値」のうち、どの文脈で使用されているか、考えればいいということだな。
例文
などてかくはかなき宿りは取りつるぞ。(源氏物語)
(訳)どうしてこのように頼りない宿を取ったのか。
桜ははかなきものにて、かくほどなくうつろひ候ふなり。
(訳)桜はあっけないもので、このようにすぐに散るのです。
歯黒めつけなど、はかなきつくろひものどもすとて、うちとけてゐたるに、(紫式部日記)
お歯黒をつけるなど、ちょっとした化粧などをするとして、くつろいでいたところ、