召喚!!
意味
(1)お呼びになる・お呼び寄せになる
(2)お取り寄せになる
(3)任命なさる
(4)召し上がる・お召しになる
(5)お乗りになる *中世以降
ポイント
上一段動詞「見る」の未然形「み」に、尊敬の助動詞「す」がついて「みす」となったものが、やがて「めす」になったと言われます。
もとは「呼ぶ」「呼び寄す」の尊敬表現ですが、「食ふ」「着る」「飲む」の尊敬表現として、(4)の意味で使うことも多いです。
「見る」に尊敬の「す」がついたものが、どうして「お呼びになる」になるんだろうね。
偉い人が、従者のほうをギョロっとそっちを見て、目くばせをしたら、従者は「何か用事があるのかな?」って近づいて行ったのかな。
そういうことかもしれませんね。
いちいち言わなくても、ちょっとした目線で、「どうしましたか?」って人が来るでしょうからね。
そうやって、もとは「人」を自分の側に引き寄せる言葉であったわけだけれども、「飲食物」や「衣類」を引き寄せる場合、実態としては「食べる・飲む」「着る」といった貴人の行為を意味するわけだから、「召し上がる」「お召しになる」なんて訳にもなるわけだね。
そうですね。
あとは、中世になると「輿」や「舟」といった乗り物を引き寄せることも意味するようになり、「お乗りになる」と訳すこともありました。
例文
人召し、「篝火の台一つ、こなたに」とめす。(源氏物語)
(訳)人をお呼びになり、「篝火の台を一つ、こちらに」とお取り寄せになる。
さて、宇治の里人を召して、こしらへさせられければ、(徒然草)
(訳)そこで、(水車のある)宇治の里の人をお呼び寄せになって、造らせになさったところ、
「右近ぞ見知したる。呼べ」とて召せば、参りたり。(枕草子)
(訳)「(犬の翁丸のことは)右近が見知っている。呼べ」と言ってお呼び寄せになると、(右近が)参上した。
「いざたまへ、出雲拝みに。かいもちひ召させん」とて具しもて行きたるに、(徒然草)
(訳)「さあ(一緒に)いらっしゃい、出雲大社の参拝に。ぼた餅を召しあがらせよう【ごちそうしよう】」と言って、(集団を)連れて(出雲に)行ったところ、
「召す」に使役の助動詞「す」がついているので、「召し上がらせる」となります。
さらに、意志の助動詞「ん」がついているので、「召し上がらせよう」となります。
意訳すると「ごちそうしよう」などとなりますね。
帝ばかりは御衣を召す。残りは皆、裸なり。(沙石集)
(訳)帝だけは御衣をお召しになる。残り(の臣下)は皆、裸である。
その日は播磨の国山田の浦に着かせ給ふ。それより御輿に召して、福原へ入らせおはします。(平家物語)
(訳)(高倉上皇は)その日は播磨国(いまの兵庫県)山田の浦にお着きになる。そこからは御輿にお乗りになって、福原へお入りになった。
中世からはこのように「お乗りになる」という意味でも使用されます。
『平家物語』では他にも「人びと皆、御舟にめす」などと使用されています。