和歌や会話文は(2)が多いよ。
意味
(1)【過去】 ~た・~たということだ
(2)【詠嘆(気づき)】 ~たのだなあ・~だなあ
ポイント
「けり」は、「来あり」がつまったものだと言われています。
「語り手」のところに「出来事がやって来て、いま存在している」というのが、「けり」の本質的な意味です。
したがって、「けり」は、次のような場合に使用されやすいです。
◆ ある事実にいま気がついたということ(気づき・詠嘆)
◆ かつてどこかであった出来事をいま語り起こすこと(伝聞過去・伝承過去)
「けり」は、ある出来事が、意識レベルに「やって来る」ということなんだな。
そうですね。
「そうだったんだ!」と「気づく」用法というのは、一種の感慨をもって表現されているので、「詠嘆」という意味になります。
「前に、こういうことがあってさ!」と「再生(リプレイ)」する用法であれば、「過去」となります。
和歌のなかにある「けり」は、「何かに気づいた」ことを表すことが多いので、「詠嘆」の用法になりやすいです。「会話文」の中の「けり」もそうですね。
一方、物語や説話などの語り手は、いわばビデオデッキの「再生」の役割を果たしているので、物語や説話などの「地の文」の「けり」は「過去」になりやすいといえます。
例文
今は昔、竹取の翁といふ者ありけり。野山にまじりて竹を取りつつ、よろづのことに使ひけり。
(訳)今は昔、竹取の翁という者がいた(ということだ)。野山に分け入って竹を取っては、様々なことに使っていた(ということだ)。
「さは、翁丸にこそはありけれ。昨夜は隠れ忍びてあるなりけり。」
それでは、(この犬は)翁丸であったのだなあ。昨夜は隠れて人目を避けていたのだなあ。
このように、語り手自身がある事実に気がついたことを示す「けり」は、「気づき」の用法と考えます。
和歌・会話文・心内文での「けり」は、基本的にこの用法、いわゆる「気づき」の「けり」です。
たいていは「一種の驚きや感慨」がこもっているので、「詠嘆」とも言います。
大学以上の専門的な話になると、「気づき」と「詠嘆」は必ずしもイコールではないのですが、入試の水準では「気づき=詠嘆」と考えて大丈夫です。