うたてし 形容詞(ク活用)

意志に反した変容にがっかり

意味

(1)なげかわしい・情けない・見苦しい・いやだ・がっかりだ

(2)気の毒だ・心が痛む

ポイント

「転(うたて)」が形容詞になったものです。

「転」の意味する「意図や期待に反して、事態が進んでいってしまう状態」に対して、がっかりする気持ちを示します。

副詞「うたて」を先に見ておいたほうが理解しやすいと思います。

「転がっていってしまう現象を止めようがなくていやになっちゃう」っていうイメージだな。

そういうことですね。

中古では、いわゆる「語幹用法」の用い方が主流です。次の(a)(b)のような使い方ですね。

(a)感動詞「あな」語幹「うたて」

(b)語幹「うたて」+助詞「の」+体言(名詞)

(a)であれば、たとえば、「ああいやだ」とか「ああみっともない」といった訳になります。

(b)であれば、たとえば、「情けない〈名詞〉」とか「見苦しい〈名詞〉」といった訳になります。

「語幹用法」と称されてはいますが、副詞「うたて」が、「形容詞っぽく」使用されていく過程で、「あなうたて」「うたての~」という表現が好んで用いられたのでしょうね。

通常の「形容詞」としての使い方は、平安末期のころからになります。そのあたりでも、「ク活用」「シク活用」が一定していないので、「形容詞」としての成立が遅かったのだと思われます。

根本的には「なげかわしい」「情けない」という(1)の意味ですが、そういう状態に陥っている者に対する憐憫れんびんの情」として使用する場合、(2)のように「気の毒だ」「心が痛む」といった訳し方をします。

例文

さくりあげて、よよと泣きければ、うたてしやな。(宇治拾遺物語)

(訳)しゃくりあげて、「よよ」と泣いたので、がっかりすることだ。

勧賞かうぶらんとて、尋ね求むるぞうたてき。(平家物語)

(訳)褒美をいただこうとして、(平家の子孫を)探し求めるのはなげかわしいことだ。

討たれさせたまひけん宮の御運のほどこそうたてけれ。(平家物語)

(訳)お討たれになったとかいう宮【高倉宮】の御運のほどは気の毒なことだ。

具足したてまつり、行方も知らぬ旅の空にて憂き目を見せたてまつらんもうたてかるべし。(平家物語)

(訳)(妻であるあなたを)引き連れて、行方もわからない旅の空でつらい目をお見せ申し上げるようなことも気の毒なことのはずだ。

下の2つの例文は、「憐憫の情」としての使い方ですね。