こよなし 形容詞(ク活用)

越えるもんがない!

意味

(1)この上ない・格別である

(2)段違いに・格段に *連用形で、下に「勝る」「劣る」などを伴う。

ポイント

成り立ちははっきりしませんが、「越ゆなし」から「こよなし」になったという説があります。

「越ゆ」が「無し」なので、「越えるものがない」ということになりますね。

そのことから、「この上ない」「格別だ」「段違いだ」という意味で用いられます。

主に肯定的な文脈で「ほめ言葉」として使用されますが、下に「けなし言葉」がある場合には、むしろ「とんでもなくダメだ」という逆の評価に用いれます。

まあ、良くも悪くも「これ以上のものはないぞ」っていうことなんだな。

そうですね。

現在でも、「とんこつラーメンをこよなく愛する」とか、よく使われることばですね。

例文

やむごとなき人のし給へることは、こよなかりけりとよころぶ。(落窪物語)

高貴な方のしなさったことは、格別である【この上なく優れている】なあと喜ぶ。

けはひ異に優れて聞こえ、君達着たまへる物、こよなく劣りて見ゆ。(落窪物語)

(訳)(落窪の君は)雰囲気がとりわけ優れていると評判であり、(他の)姫君たちが着ていらっしゃる着物が、格段に劣って見える。

つくづくと一年ひととせを暮らすほどだにも、こよなうのどけしや。(徒然草)

(訳)しみじみと一年を暮らすだけでさえも、この上なくのどかなものだよ。

「こよなう」は、「こよなし」の連用形「こよなく」がウ音便化したものです。

中古の日記や物語にもよく出てくる表現です。