けいす【啓す】 動詞(サ行変格活用)

意味

① (太皇太后・皇太后・皇后・皇太子などに)申し上げる

ポイント

漢語である「啓」に、サ変動詞の「す」がついた謙譲語です。

皇后や皇太子といった、「天皇・上皇・法皇に次ぐ身分の存在」に対して申し上げる場合に「啓す」を使用します。

「天皇・上皇・法皇」には「奏す」、次ぐ身分には「啓す」と、セットで覚えておきましょう。

ただし、実際には「申す」「聞こゆ」「聞こえさす」といった謙譲語を使用することが多いので、古文を読んでいて「啓す」に出会う機会はそれほど多くはありません。

「帝」「上」「院」などに対して申し上げるときは「奏す」だったな!

「天皇・上皇・法皇」は、古文の文中ですと「帝」「上」「院」と書かれていることのほうが多いですね。

「帝(みかど)」は、もともとは皇居の門を意味する「御門(みかど)」のことですが、それが皇居全体や、そこに住む天皇を意味するようにもなりました。「帝」を「みかど」と訓じて、主に在位中の天皇を意味するようになります。

「上(うへ)」は、天皇だけではなく、その妻なども広く意味しますので、あまり限定的に考えないようにしましょう。

「院(ゐん)」は、天皇を引退したあとの呼称です。古文はたいてい振り返ったことを書くので、「院」と書かれていても、描かれている場面では在位中の天皇であることも多いです。

例文

「よきに奏したまへ。啓したまへ。」など言ひても、得たるはいとよし。得ずなりぬるこそいとあはれなれ。(枕草子)

(訳)「よろしく(天皇に)申し上げてください。(皇后に)申し上げてください。」などと言っても、(官職を)得た人はたいそうよいが、得ずに終わった人は気の毒なことだ。

「奏す」と「啓す」が使い分けられている重要な例文です。

どの辞書を引いても「奏す」か「啓す」でこの例文が使用されていますね。