あるべきものがない
意味
(1)むだである・役に立たない
(2)むなしい
(3)何もすることがない・何もない
*「いたづらになる」は「死ぬ」の婉曲表現にもなる。
ポイント
「そうであるはずだ」という期待に反して、それがないことを意味しています。
そのことから、「役に立たない(むだだ)」「何もすることがない(ひまだ)」「何もない(空だ)」といった意味になります。
「徒」という漢字を覚えてしまうといいと思います。「徒」は「あだ」とも読み、「実を結ばないこと」を意味します。「あだなり」という形容動詞も似たような意味合いの語になりますよ。
「いたづら」は、現代語だと「悪ふざけ」という意味になるけど、古文はそうじゃないんだな。
「悪ふざけ」というのは、「本当ならすべきでないことをする」ことですよね。
もともとは「いたづら」は「あるべきものがない」ということですが、そのことから、「してはいけないことをする」という意味に変質していったのだと思います。
いずれにせよ、古文の試験では「悪ふざけをする」と訳さないようにしてください。
例文
上人の感涙いたづらになりにけり。(徒然草)
(訳)上人の感激の涙はむだになってしまった。
少しの地をいたづらに置かん事は、益なき事なり。
(訳)わずかな土地でもむだに放置するようなことは、無益なことである。
なんぞいたづらに休みをらん。(方丈記)
(訳)どうして何もすることがなく休んでいられようか、いや、いられない。
南の町には徒らなる対どもなどもなし。(源氏物語)
(訳)南の一面には空の(空いている)対の屋などもない。
我が身は今ぞ消え果てぬると書きて、そこにいたづらになりにけり。(伊勢物語)
(訳)自分は今消えてしまいますと書いて、そこで死んでしまった。