やがて【軈て】 副詞

即応しているさま

意味

(1)そのまま

(2)すぐに・すぐさま・ただちに

(3)ほかでもない・すなわち

(4)まもなく・そのうち

ポイント

難しい漢字なのですが、「軈」という文字を覚えてしまうと楽です。

「身」に「應」なので、「実際に応じる」というイメージです。前の状態に対し、時間的・状況的に「そのまま連続して反応している」ということから、「そのまま」「すぐに」などと訳します。

ある物体「A」について、そのままイコール「A´」であるというような場合にも、「やがて」を用いることがあります。その場合、「ほかでもない」「すなわち」などと訳します。

現代語だと、「しばらく経って」という意味なのにね。

中世から近世にかけて、「前の出来事」と「次の出来事」の時間の幅が長いものについても、「やがて」が用いられるようになっていったようです。

ついには、「しばらくして」という現代の使用法のほうが主流になっていったようですね。

ただ、古文の試験では、「そのまま」「すぐに」の意味がほとんどです。時々(3)の「ほかでもない」の意味が問われます。

例文

薬も食はず、やがて起きもあがらで、病みふせり。(竹取物語)

(訳)薬も飲まず、そのまま起き上がることもなく、病みふせている。

状況的に連続しているということを示しています。

梶原、たばかられぬとや思ひけん、やがて続いて打ち入つたり。(平家物語)

(訳)梶原は、だまされたと思ったのだろうか、そのまま続いて(川に)乗り入れた。

「すぐに」「ただちに」などと訳してもいいですね。

音に聞きし猫また、あやまたず、足もとへふと寄り来て、やがてかき付くままに、頸のほどを食はんとす。(徒然草)

(訳)うわさに聞いた猫またが、狙いを外さず、足もとへふと寄って来て、すぐさま飛びつくと同時に、首のあたりを食おうとする。

時間的に連続しているということを示しています。

この尼ぜと申すは、やがて法皇の御乳の人、紀伊の二位の事なり。(平家物語)

(訳)この尼御前と申すのは、ほかでもない【すなわち】(後白河)法皇の乳母である方、紀伊の二位のことである。

「そのまま同じである」という意味での「やがて」ですね。