ひとまずパッと!
意味
(1)ほんのちょっと・ほんのしばらく
(2)急に・突然に
(3)ほんの少しも(〜ない)・まったく(〜ない) *打消表現を伴う
ポイント
「あかる」という動詞がありまして、「離る・別る」などと書きます。漢字をみてのとおり「離れる」ということです。「あからさまなり」という形容動詞は、ある人やモノが、パッとその場を離れるような様子を示しているのですね。
それがどうして「ほんのちょっと」になるんだ?
「あかる」は「つどふ」の対義語なんです。つまり、「集合しているものがパッと散り散りになる」イメージです。
他に「わかる(別る・分かる)」という動詞もありまして、こちらは「あふ(会ふ)」の対義語です。「わかる」は、「ひとつのものが別々になる」イメージです。
ああ~。
「あかる」は、「いったん解散!」みたいな感じで、「わかる」は「ロング・グッドバイ」みたいな感じなのかな。
まさにそのとおりです。
「あかる」は、そもそも「つどふ」ところがあったわけですから、一度「解散」しても、またそこに集まる可能性がけっこうあります。
つまり、「わかる」に比べると、「あかる」は、「短期的な解散」に過ぎないことが多いのです。
「あからさまなり」という形容動詞は、その「短期的である」ということに意味の比重がありまして、「ほんのちょっと(の間)」「ほんのしばらく(の間)」と訳すことになるのです。
「あからさまに業務スーパー行きけり」なんて言う場合、短期的なお出かけであって、すぐに家に帰ってくるつもりだということなんだな。
そうです。
したがって、「あからさまなり」は、下に動作を伴って、「あからさまに〇〇」という形(連用形)で用いられることがほとんどです。
しかも、「出づ」「まかづ」「まゐる」「渡る」など、移動の動作を修飾することが多いですね。
平安時代になる前は、パッと移動する「速さ」に意味の比重があって、「急に」「突然に」と訳すケースがありましたが、平安時代はほとんど「ほんのちょっと」「ほんのしばらく」で通用しますね。
例文
をかしげなるちごの、あからさまに抱きて遊ばしうつくしむほどに、かいつきて寝たる、いとらうたし。(枕草子)
(訳)愛らしい幼児が、ほんのちょっと抱いて遊ばせかわいがるうちに、抱きついて寝てしまったのは、たいそうかわいい。
なほいとゆゆしくて、六条院には、あからさまにも、え渡りたまはず。(源氏物語)
(訳)やはりたいそう不吉で、六条院には、ほんの少しも、お出かけになれない。
打消表現を伴うと、「ほんの少しも〜ない」という意味になることから、文脈としては強い否定文のようになります。
選択肢問題であれば、「まったくお出かけになることができない」という訳になる可能性もあります。