あながちなり【強ちなり】 形容動詞(ナリ活用)

自分優先!

意味

(1)強引だ・無理やりだ・むやみだ

(2)ひたむきだ・一途だ

(3)はなはだしい・ひどい

(4)(下に打消し表現を伴い)必ずしも~ない・むやみには~ない

ポイント

ちなり」という漢字をイメージできれば、意味はそのままの形容動詞です。

「あな」はもともとは「自己」を意味したと言われます。

「がち」「勝ち」です。現在でも、「ためらいがち」「無駄話をしがち」などという使い方がありますが、それらは「がち」の上の語が勢いを持っていて、その傾向が強いことを意味します。

そのことから、「あながちなり」は、「相手を抑え、自分(自己)が勢いを持っていること」を意味します。「俺が! 俺が!」という状態を表すので、「強引」「身勝手」「利己的」というニュアンスになります。

「自分」が「優先されている!」ということなんだな。

そうですね。

また、「しなくていいことまで必要以上に自分が動く」ということから、回数や程度が「過度」であることも示します。そのことから「ひたむきだ」「一途だ」とか、「はなはだしい」といった訳になります。

また、下に打消し表現を伴うと、その「過度」なところを否定することになるので、「必ずしも~ない」「そうむやみには~ない」などと訳します。

例文

思ひたちしことを、あながちにもてはなれたまひしこと。(源氏物語)

(訳)(私が)思いたったことを、強引に【一方的に】遠ざけなさったことよ。

人のあながちに欲心あるはつたなきことなり。(今昔物語集)

(訳)人が、むやみに欲をかいた心をもつのは愚かなことである。