ありく【歩く】 動詞(カ行四段活用)

うろちょろ

意味

(1)動きまわる・歩きまわる

(2)(あちこち)移動する

(3)~(し)てまわる・~(し)続ける *補助動詞の用法

ポイント

「歩く」と書いて「ありく」と読むので注意が必要です。また、意味も現代語の「歩く」とは違います。古語の「ありく」は、あちこち動きまわることであり、徒歩とは限りません。

訳をするときには、「~まわる」のニュアンスを意識したいですね。

ただ徒歩でスタスタ進むことではないんだな。

「ありく」は、移動の手段を問わず、広範囲にわたってうろうろすることが中心的意味ですね。

徒歩でスタスタ進むことを言いたいのであれば、古語では「歩む(あゆむ)」を用いることのほうが多いです。

さて、「ありく」は、もとは「空間的に」あっちこっちに移動するという意味合いなのですが、補助動詞として使われると、「時間的に」何度もし続けるような意味でも用いられるようになりました。

「○○ありく」という補助動詞の用法の場合、「空間的」な意味合いであれば「~してまわる」「時間的」な意味合いであれば「~し続ける」と訳しましょう。

例文

舟に乗りてありく人ばかり、あさましうゆゆしきものこそなけれ。(枕草子)

(訳)舟に乗って動きまわ人ほど、驚きあきれるほどひどいものはない。

その辺り、ここかしこ見ありき、田舎びたる所、山里などは、いと見慣れぬ事のみぞ多かる。(徒然草)

(訳)そのあたりを、あちこち見てまわり、ひなびた所や、山里などは、たいそう見慣れないことばかりが多い。

限りなく悲しくのみ思ひありくほどに、(大和物語)

(訳)この上なく悲しいとだけ思い続けるうちに、