
〇和歌


あらざらむ この世のほかの 思ひ出に 今ひとたびの 逢ふこともがな (和泉式部)

大江山 いく野の道の 遠ければ まだふみもみず 天の橋立 (小式部内侍)

滝の音は 絶えて久しく なりぬれど 名こそ流れて なほ聞こえけれ (大納言公任)

名にし負はば 逢坂山の さねかづら 人に知られで くるよしもがな (三条右大臣)

このたびは ぬさもとりあへず 手向山 紅葉の錦 神のまにまに (菅家)

月みれば ちぢにものこそ 悲しけれ わが身ひとつの 秋にはあらねど (大江千里)

吹くからに 秋の草木の しをるれば むべ山風を 嵐といふらむ (文屋康秀)

今来むと 言ひしばかりに 長月の 有明の月を 待ち出でつるかな (素性法師)
